Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

再録(http://d.hatena.ne.jp/n-291/20070410#p2)

■被写体について/美術と写真について(※Web写真界隈インタビューの初稿より 2007年)

「被写体」という言葉の定義ですが、「写し取られる対象」という意味でしょうか、それとも、「自分が撮りたい何か」という意味でしょうか。「被写体」という言葉がよくわかりません。単純に対象を指すのだとしたら、直接写真のフレームに入ってくるものはすべて対象(一次的)だと言えるでしょうし、またそのフレームに入った対象が表象するもの(フレームの外のもの)すべても対象(二次的)だと言うことができるでしょう。なので非常に曖昧な言葉だという気がします。
おそらく「被写体」という言葉が使用されるケースの多くは、その「被写体」を撮影した写真がもたらす効果と効用があらかじめ前提とされてしまっているように思います。

写真と美術ということでいえば、所与の美術の文脈を意識するあまり、すでに現代美術として成功している写真のクリシェをいかに取り入れていくか、ということに血道を上げている方もいるように思います。しかし、いずれはそんな努力も過去の笑い話になってしまう時代が来るのではないでしょうか。日本の写真の世界が成熟するにともなって、いわゆる「現代美術な写真」ではなくとも、現代の写真表現である「現代写真」が十分に現代美術として通用する日もそう遠くないでしょう。未来に希望を持ちたいと思います。

◇ Every Sunday──福居伸宏 - Web写真界隈
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/webphoto/2007/04/05/5996.html