我々の平和な生活をその手中に握っている強大国が理性的であり賢明であることを心から希望する。しかし、希望を「確実な事実」だと思うことは常軌を逸した錯誤であろう。そこで、最悪の事態に備える覚悟をしておく必要がある。(スイス政府『民間防衛』)
https://twitter.com/minkan_bouei/status/331081922979721217
◇ 『民間防衛―あらゆる危険から身をまもる』
http://www.amazon.co.jp/dp/4562036672
◇ スイスにおける民間防衛 - 民間防衛 - Wikipedia
徹底的な武装中立を志すスイスでは、1969年(ちなみにチェコ事件の翌年である)に、当時の冷戦の高まりを受け、スイス政府がタイトルそのままの冊子『民間防衛』を各家庭に260万部発行・無償で配布した歴史がある。この冊子の存在は、スイスの国防意識の高さを如実に表すエピソードの一つとして、非常に有名である。発行元は das Bundesamt für Bevölkerungsschutz(国民保護庁)。
この冊子は非常に重厚な内容であり、主として戦争の危機に際して必要な準備や心構えなどについて詳しく解説されている(一方で地震・噴火・風水害といった自然災害への備えに関する記述は皆無である)。食料品や燃料の配給統制や食料の貯蔵に始まり、民間の自衛・防災組織の構築、敵国の攻撃によって起こる被害への対処法、核兵器や化学兵器への対策や実際にそれらが使用された際の行動、果ては敵国のプロパガンダやスパイに対する対策や、万が一敵国に占領された場合(但し政府が交戦の末に降伏したのか否かについては一切記述がない)のレジスタンス活動の心得など、有形無形の危機が仔細に渡って解説されている。
日本でもこの冊子は何度か発売されており、スイス本国で配布された直後の1970年(その後1983年に一度絶版になる)、阪神・淡路大震災後の1995年、そして極東における有事問題への関心が高まり出した2003年には新装版が、それぞれ原書房から発売され、2005年現在、日本国内で累計15万部以上が発行されている。