貧困問題というとその対策の中心は生活保護をめぐる議論の重要度が高くなるが、仕事から引退した高齢世代にとって、所得の保障は生活保護よりも、第一義的には公的年金の重みが増す。しかし、公的年金の比重は貧困救済よりも、現役時代と遜色のない消費水準を多くの高齢者が引退後にも維持することに置かれているため、平均的高齢者像を中心にすえて制度設計が図られる。そうすると、年金制度のなかで低所得高齢者の問題の扱いは年金改革の議論の中心とはなりにくい。
しかしながら、社会保障給付費のうち年金が占める割合は半分であり[*1]、高齢者世帯の所得の7割が公的年金による収入でありながら[*2]、依然として無年金・低年金者が存在し、高齢者の貧困率も低くはない[*3]。