Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

ナイジェル・スリフトはこう論じる。十九世紀

以来、速度・光・動力が近代の感情構造の重要な側面となってきたが、今や、それらはお
互いの中に畳み込まれつつある、と。移動の迅速さは、旅行に、それ自体価値のあるもの
という新たな意味を与え、グリーティングカードのような物品の流通も可能にした。人工
的な光は夜に新たな意味を与えたが、空間内で身体の位置を特定・配列することによって
新たなレヴェルの監視も可能にした。動力は、とりわけ電灯のスウィッチを入れるという
一瞬の動作の中に、ここ以外のどこかにある存在の証拠を示し、日々の生活を新たなメタ
ファーに変え、そうして、社会が巨大な電力ネットワークに依存していることを見せつけ
た。二十世紀後半になると、スリフトの見るところ、この三者は『流動性』として癒着・
融合した。電子テクノロジーは直接/間接の通信量を大きく増加させ、新型の輸送手段は
観光旅行・ビジネス旅行・移民を大幅に増大させた。知覚そのものが自動化され、そうし
て、光の『機械的複合体』が、観察する人間主体なき視覚をもたらした。
デイヴィッド・ライアン『監視社会』より
※某所のキャッシュから重引
http://www.amazon.co.jp/dp/4791760085
http://www.bk1.co.jp/product/2251039