Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

長塚秀人さんの個展は、

むしろウタ・バース(Uta Barth)を思わせる内容でした。
フォーマットが正方形であることと、2点組で展示していたカットがあったことが、
そういう印象をもたらしたのかもしれません。
ツボにはまればずっと見飽きない写真だと思います。
丹念にコントロールされて切り詰められた風景の純度の高さゆえか、
今回展示された9点の写真を比較対照しながら見続けていると、
その「見え」が単一の印象に留まらず移ろっていきます。
その移ろいのメカニズムは、おそらく距離の不在感=不明瞭さと
正方形フォーマットの中心の強さとの相剋にあるのでしょうが、
距離が伸縮し「見え」が変化する感覚が、今回の展示空間ではなく、
別の展示空間になったときに、どうなるのかということに非常に興味があります。
展示する写真の構成や展示空間の使い方はもちろん、
額装の有無、プリントの調子、ライティング、壁面の色・質感などが、
かなり重要な要素になってきそうです。
完璧にハマれば、距離が伸縮し「見え」が変化する感覚が
鑑賞者の身体感覚の伸縮──たとえば、ドラえもんひみつ道具ガリバートンネル」の中を
何度も行ったり来たりするような感じ──にさえもつながるように思います。
ちなみに、エディションを消化する勢いで売れていたのは、
やはり一番わかりやすい作品でした。
おそらく長塚さんの作品の本質的な部分が露わになっている作品は、
別のものではないでしょうか。
それが少し残念でした。
http://www.roentgenwerke.com/works/0703nagatsuka/nagatsuka.html
http://www.roentgenwerke.com/


◇ 長塚秀人「sq.」《3/2、3/3》 - ex-chamber museum: review
http://ex-chamber.seesaa.net/article/35401622.html
幕内政治さんのレビュー