生まれたてのサインカーヴ。両親から受け継いだであろう固有の振動数と振幅によって、その人の持つ単振動の初期状態が規定される。
そのような固有の振動が、まわりにぶつかってゆく中で、一時的にゆらぎ、あるいは、振れ幅を変えてゆく。和音が響き、時にかすかな雑音とともに、倍音成分が聞こえはじめる。
y = sin xは、こうして時間の経過とともに、次第に多項式化する。やがて近似式でしか表せなくなり、その極値の個数と微分不可能な点は増え続るにちがいない。
しかし一方で、この振動は、互いにその力を交差させながら、巨視的にはやがて減衰してゆくだろう。ゼロという漸近線に、寄り添うように収束していくのである。
はたして生命現象は、響きそのものであるか――ある時、ある場所に、沢山の人が集まり、ある熱量を持ちながら、決して繰り返されることのない振動を繰り返し伝え合う。その人たちの隙間に発生するもの。