Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

再録(http://d.hatena.ne.jp/n-291/20080824#p15)

■メディア・空間・時間・痕跡 - new century new cinema

撮られた当時には見えなかったものを指摘することによって今我々が何ものかを見過ごしつつあることに気づくこと、それはビトムスキーとともにかつて共同作業をしたことのあるハルーン・ファロッキとの共通の主題でもある。ファロッキの代表作『この世界を覗く-戦争の資料から』は終戦前にアウシュヴィッツを撮った米軍機の航空写真から、強制収容所を認知することができなかったエピソードを中心に、メディアがとらえた映像について当時の人々が読み取れなかった兆候から視線の不在を批判している。そしてこの視線の不在は『囚人を見ているのかと思った』の監視装置と『遠い戦争』のミサイルにとりつけられたキャメラのとらえた映像に至って、システムからの人間の駆逐が完成する。そこでは見ること、認識は機械に委ねられ、我々と機械の立場は逆転する。つまり今では機械=メディアが人間の視線を限界づけコントロールしているわけだ。ゴダールの『パート2』にアイディアを得た『アイ・マシーン』シリーズの併置されたふたつの画面とズラされた編集は、使われている素材とは反対に、我々の視線が限界づけられた機械の視線を超えてふたたび疑念や批評的視線や歴史的意識といった自立性を回復できるのかどうかを緊急に問うている。視線の欠如こそ我々の破滅へと直接的につながるものだからだ。

http://www.ncncine.com/index.html
赤坂大輔さんのウェブサイトより。