Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

2009-07-08 - Heliograph(太陽の描く絵) より

 写真展をやることへの疑問を前に書いた(http://d.hatena.ne.jp/heliograph/20090630/1246379165)が.写真を人に見せることについて,またまた西井一夫「20世紀写真論・終章―無頼派宣言 (写真叢書)」からの引用

 撮った写真は,あるまとまりをつけて人に見せてもらわなければ気がすまない.というのはあまりにも虫がよすぎる.何を撮るのも勝手です,ともうしあげているのだから,それを見ないものこちらの勝手なのであって,見せるために撮っている姿勢は,評価されたされたがりの渇望症でいじましい.見せることは大事だが,それは厳格さ(「含蓄」と「ひそやかな自信」とに支えられた)の要請であって,やたらに写真展を開き,雑誌に発表することではない.一年に何回も似たりよったりの写真展を平気でやるような写真家や,どこかに旅したり街をちょいと歩いたりするとすぐ写真展が開けたりする人は確かに巧い人に違いないだろうし,要領もいいのだろうが(ずうずしいのかもしれないし無知なのかもしれない).「過剰な多産」が特質となっている時代に,さらに過剰な多産を付け加えるという愚挙を,どうだ,と身勝手に押しつけているばかりではないか.たぶん,巧さと愚かしさはどこかでつながっている.

不器用さは謙虚さと結びあうことで愚かさからまぬかれているところがある.

見せるにせよ,見せ方の多様さがあってしかるべきだろう.メーカーのできあいギャラリーとか,すでに用意された場で見せる安易さ,ヨーロッパから帰国した北島敬三は,いつでもどこへも(むろん条件によって)すぐ自分の写真作品を貸し出せるようにマットした写真を箱におさめて造っていて,見たいという人が訪ねてくればいつでも見せられる状態にしている.見たい人,見せたい人が個人的に個人的に写真を見せるという見せ方もたしかにある.

http://d.hatena.ne.jp/heliograph/20090708


◇ 西井一夫『20世紀写真論・終章―無頼派宣言』(青弓社
http://www.seikyusha.co.jp/books/ISBN978-4-7872-7144-0.html
http://www.amazon.co.jp/dp/478727144X
http://www.bk1.jp/product/02095385
未読。


http://d.hatena.ne.jp/n-291/searchdiary?word=%c0%be%b0%e6%b0%ec%c9%d7