この転換は「鏡と窓」展を企画したMOMAの写真部長ジョン・シャーコフスキーとジョン・ポルツとの共同ディレクションによるもので、ポルツが書いた企画意図には、“ビッグ・ピクチュア”は近代の写真美学へのひとつの挑戦であり、写真界のポストモダンの流れはここから生まれてゆくことになるだろうと予測されている。
「ビッグ・ピクチュア」展と題されてはいるが、中身は構成という身ぶりを基本としたいわばコンストラクテッド・フォトグラフィーと展示をその中心概念にはめこんだインスタレーション・フォトグラフィーの饗宴というべきものである。
'78年の「鏡と窓」展で、シャーコフスキーは、60年代以降のアメリカ写真を鏡派と窓派に分け、複雑なその状況に巧みな二分法の論理を展開しひとつ斬新な地平を引いてみせたが、わずか数年のあいだに、この明快な展望はすっかり役に立たなくなったかのように見える。(シャーコフスキーが若いポルツを共同ディレクターとした理由もわかろうというものだ。)
80年代に入ってヴィジュアル・アートは大きな変動期を迎えている。60年代末から70年代にかけて、ミニマリズム、アースワーク、コンセプチュアル・アート、ボディ・アート、スーパー・リアリズム……といった現代美術の動向と交差しながら写真は独自の構造の深みを身につけ、80年頃を境にして一挙に現代美術の表面に踊り出してきたのもその一例だろう。
彼らは時代を構成する様々な空間の特質を選択して肉体化し、あるいは意識よりも深いところでそれらと交わっていて、その身振りを写真行為のなかで浮上させ、“芸術の言葉”に変えようとしているのだ。それが今までの写真の制度ではとらえきれないものであるために、「写真」という固有の表現形式そのものの問い直しと重なっていったのである。その写真による世界認識と写真による私性の再統合に、80年代の写真表現のきわめて象徴的な軌跡を見ることができるような気がする。
『パリ・ニューヨーク・東京 つくば写真美術館'85』所収。
“若いアシスタントキュレーターのポルツはまず
この“ビッグ・ピクチュア”を3つのタイプに
分類することから始めている。”から始まる箇所で言及されている作家は、
第1のタイプ、レイ・メチカー、エスター・パラダ、ロバート・ハイネッケン、ジャン・グルーヴァー、ソル・レウイット、
第2のタイプ、シンディ・シャーマン、ジェームズ・ケースビア、
第3のタイプ、キャサリン・アグソリー、グレゴリー・ルカビナ、ジェッド・デェヴァイン、
その他のタイプ、バーバラ・カステン、ウイリアム・ウエッグマン。
以上、作家名等は原文ママ。
◇ パリ・ニューヨーク・東京写真展図録 クライン フランク他 - Yahoo!オークション
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◇ 『パリ・ニューヨーク・東京 つくば写真美術館'85』
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◇ ETV8 写された20世紀 パリ ニューヨーク 東京 - NHKアーカイブス 保存番組検索
つくば写真美術館 85でパリ ニューヨーク 東京をテーマにした展覧
会が開かれた。170人の作品450点で構成されたなかから、パリの
アジェ、ニューヨークのスティーグリッツなど20世紀初頭の作家から
最近の新しい技法の作品までを紹介する。
http://archives.nhk.or.jp/chronicle/B10001200998506240130108/