Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

「主観恐怖症」の日本 - Zopeジャンキー日記

「主観恐怖症」は、自分の考えや意見をつねに押し殺していくので、自分の考えや意見を持つ必要もなくなり、<10分しか記憶できない金魚>になりやすい。自分の考えや意見を持つよりも、「場に同調する力」ばかり鍛えることになり、そのときに支配的な流れ、「空気」に対して同調し、付和雷同するだけの存在になっていく。個々の人間が自分なりの基準を持たず、「勝ち馬に乗る」「みんなと同じことをする」ことしか考えないような社会は、効率的な面もあるが多様性を欠くので、イノベーションが出にくくなるし、全体主義ファシズムに対しても脆弱である。


こうした「主観恐怖症」、日本的な「空気」から比較的自由なのは、海外の文化を知っている帰国子女や、人文系・芸術系の人たちなどだろう。「個性が評価される」「個性が強みになる」という評価基準、その「文化」を身をもって体験していれば、個性を発揮すること、主観を出すことに自信がつく。


海外でもフランスなどは特に、人文系・芸術系にめっぽう強く、「個性」が評価される文化だろう。上記コラムの自由闊達でユーモラスな書きっぷりにも、それがあらわれている。日本の大手新聞社の記者では、この書き方はちょっと考えられない。


フランスがどれくらい個性を重視しているかは、次のエントリを読むとわかる。


フランスの日々 - センター入試とバカロレアに見る日仏の違い
http://mesetudesenfrance.blogspot.com/2009/06/blog-post_23.html


フランスの大学入試(バカロレア)には「哲学」があり、次のような問題が出るという。


<La langage trahit-il la pensee?(言語は思考を裏切るか?)
 Est-il absurde de desirer l’impossible?(不可能を望むことは非合理か?)>


大学入試でこんな問題が出るなんて、日本では到底考えられない。「こんなもので合否を決められてはたまらない」と、非難ごうごうだろう。「客観的」でないからだ。


これについて、ブログ主のMadeleine Sophieさんはこう書いている。


<日本人の多くが受験するセンター試験では、正解が一つである問題が出題されますが、バカロレアでは以上のような正解のない問題が出題されます。正解のない問題に論理を用いて他者を説得する文章を書く能力が問われることになります>。


もう学校教育のレベルで、ここまで考え方に開きがあるわけだ。


日本の教育における「正解主義」に対して、もっと「仮説ドリブンアプローチ」が必要ではないかという話を以前書いたが、その話にも重なる。日本の教育における「正解主義」は「客観主義」でもあり、これが「主観恐怖症」につながっている。主体的な情報発信や思考、表現の訓練をせず、ただ受動的に暗記するだけなので、思考力や創造力が育たない。


日本の「主観恐怖症」は、日本人の「精神」そのものに根ざしているという以上に、教育や制度といった「構造」のレベルでも、その傾向を助長するように仕組まれている部分が少なくないように思う。

http://mojix.org/2009/10/11/shukan_kyoufu


バカロレア・哲学2008 - ね式(世界の読み方)

文系/Série L (littéraire) coefficient 7

  • La perception peut-elle s'éduquer ?
  • Une connaissance scientifique du vivant est-elle possible ?
  • Expliquer un extrait des "Cahiers pour une morale" de Sartre.
  • 認識は教育されうるか
  • 生命体の科学的認識は可能であるか
  • サルトルの『Cahiers pour une morale』の抜粋を解説せよ(注;マラルメ論ですね)


科学系/Série S (scientifique) coefficient 3

  • L'art transforme-t-il notre conscience du réel ?
  • Y a-t-il d'autres moyens que la démonstration pour établir une vérité ?
  • Expliquer un extrait de "Le monde comme volonté et comme représentation" de Schopenhauer.
  • アートはわれわれの現実意識を変えうるか
  • ひとつの真実を確立するためにデモンストレーション以外の方法はあるか
  • ショーペンハウアー『意志と表象としての世界』からの抜粋テキストを解説せよ


経済と社会系/Série ES (économique et social) coefficient 4

  • Peut-on désirer sans souffrir ?
  • Est-il plus facile de connaître autrui que de se connaître soi-même ?
  • Expliquer un extrait de "De la démocratie en Amérique" de Alexis de Tocqueville
  • 人は苦しむことなしに欲望しうるか
  • 他者を知ることは、自己を知ることより簡単か
  • アレクシー・トクヴィルアメリカの民主主義』からの抜粋文章を解説せよ


テクノロジー系/Série Technologique (toutes séries sauf TMD) coefficient 2

  • Peut-on aimer une œuvre d'art sans la comprendre?
  • Est-ce à la loi de décider de mon bonheur?
  • Répondre à des questions d'après un texte de Kant
  • 芸術作品を理解せずに愛することはできるか
  • 私の幸福を法が決定しうるか
  • カントのテキストを読んで設問にこたえよ

http://neshiki.typepad.jp/nekoyanagi/2008/06/2008-39af.html


◇ フランス式大学入試 バカロレア この問題、解けますか? - FRENCH BLOOM NET-main blog
http://frenchbloom.seesaa.net/article/122032261.html