Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

MOUSE MUSIC

http://www.beam-me.net/art/Shibuya/mousemusic/index.html


渋谷慶一郎: mouse music、遊んでみてください。誰でもマ ... - Twitter

mouse music、遊んでみてください。誰でもマウスひとつで渋谷慶一郎になって即興できる!的なツールでもありますお http://bit.ly/9umEuo

http://twitter.com/keiichiroshibuy/status/19313379916


◇ Beyond the Art Vol.22 データミュージアムは可能か? 渋谷 慶一郎 - 文化庁メディア芸術プラザ

ここで僕が最近発表した『MOUSE MUSIC』という作品を参照したい。これはストックホルムが拠点となっている「beam me up」というインターネット上のミュージアムの委嘱によってつくられたもので、2005年から複雑系研究者の池上高志(東京大学教授)と継続的に研究、開発している非線形科学の応用による「第三項音楽」の音色生成、演奏、即興がweb上でマウスひとつで出来るという作品である。もう少し詳しく書くと、同時に最大3つまでの周期の異なる音色の生成、ループが可能であり、ドラッグした面積がループの長さを、縦軸が音量、位置が音程を決定している。またこの作品には実空間でのアクセスは存在せず体験者はwebを通して個人的に作品にアクセスする。そのことからこれは作品とゲーム、音楽ソフトの中間のようなものになっている。
僕がこの作品をつくったときに考えたのはデジタルテクノロジーを使った作品においてやはり重要なのはコンテンツそのものではないかということだ。
種明かしをすると、この『MOUSE MUSIC』はどうマウスでいじっても第三項音楽、つまり僕のデジタルミュージック作品らしく鳴るように出来ている。これは実際に体験者が演奏する音楽はおよそ6分半の僕自身の作曲作品の一部であり、体験者は僕が予め作曲した極度に非反復的な構造をもった音楽を部分的に切り取り、変型、ループすることで「第三項音楽」を生成、演奏しているかのような錯覚が起きるというわけだ。ここで作品の質を決定しているのはたったひとつのオーディオデータ=僕の作曲作品である。その質が高いか低いかというジャッジは別として元のデータという不可視な部分にのみ作曲という「人間」が存在していることによって、この作品は成立している。もしもこれが毎回ゼロからのサウンドジェネレートだとしたらそれは単にweb上にある不完全でランダムなノイズ生成ソフトにしかならず、作品としては成立しないだろう。
つまりここ数年流行している「データの不可視性」が有効な意味を持つのは実空間の展示よりむしろwebのようなやはり不可視なメディアなのではないだろうか? 美術館に来た鑑賞者の「実空間での展示」に対する満足度をどう満たすか? といった制約から一度自由になったときに、メディアがコンテンツ=作品に影響を及ぼすという本来的な意味でのメディアアートが可能になるだろう。また言うまでもなくwebブラウザ、コンピュータに向き合う個人にとって視覚、聴覚といった境界はないので、ここでは視覚優先的な印象が強いメディアアートという言葉よりもテクノロジーアートと呼ぶことにしよう。

http://plaza.bunka.go.jp/museum/beyond/vol22/