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福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

連載 椹木野衣 美術と時評:9 破滅へ至るカオス、循環するカオスモス−−−『破滅*ラウンジ』以後 - ART iT アートイット

本連載第6回でのカオス*ラウンジ展評(郄橋コレクション日比谷)に続き、先頃、雑誌『新潮』(2010年8月号)に破滅*ラウンジ論を寄せた。後者は、外見の形態(シェイプ)上では「再生」に至らなかった(=カオスから脱出できなかった)ナンヅカアジェンダ(渋谷)での展示の背後に、理念なく自走するネット・アーキテクチャの不可視な形式(フォルム)を見出し、そこに「悪い場所」特有の忘却と反復を探ることで、「新しさ」という関心でばかり見られがちなカオス*ラウンジ(以下、CLと略)の動向に、異なる視点を提供しようとするものである。これを単純に「批判」と取る向きもあるようだが、決してそういうことではない。CLの「新しさ」を、ネット内に流通するpixiv的なお絵描きやキャラの氾濫というイメージの実体に集約させて語ってしまえば、いずれCLは、その新しさゆえに早急に古くなるほかない。実際、問題はキャラクターという可視の「見え(表象)」なのだろうか。その背後にあるはずの不可視の形式上での反復を見なければ、結局のところ、 CLは単に表象上のイメージにおいて語られるしかない。また、その限りにおいて近代以後の日本美術のコンテキストとの接合はむずかしい。『新潮』での論考は、この接合を果たすために、外見上の新しさはいったん括弧に括り、未来への可能性ではなく、過去の日本の前衛美術との形式上の反復を、あえて60年代以降の反芸術に照らし合わせて検証しようとしたものだ。

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