Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

川俣正・東京インプログレス―隅田川からの眺め - 東京アートポイント計画|東京文化発信プロジェクト

世界的なメトロポリス都市である東京を、ワークショップ、シンポジウム、トーク等を通して再考するとともに、そのプロセスを、一連のプロジェクトを通じて提示していきます。プロジェクトの実施拠点を隅田川エリアに設置し、木造の塔を構築します。


このプロジェクトは、その空間的、時間的な経験の総体のなかから「東京」という新しい都市の表象・イメージが構築されることを意図し継承的に展開していきます。


会場:汐入公園およびその周辺(荒川区
主催:東京都、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)、一般社団法人CIAN

http://www.bh-project.jp/artpoint/program/art/tokyo-in-progress-01.html

東京に新たなシンボルが現れている。2011年に完成する新電波塔「東京スカイツリー」は第2の東京タワー、新しい情報配信源、そして都市の新名所として注目され、隅田川河岸に新たな景観をつくりだしている。

戦後60年一気呵成に経済成長を遂げてきた東京は、人、物、情報を膨大に取り込むことで物質的な豊かさを獲得し、都市の表情をめまぐるしく変貌させてきた。しかし、永遠とも謳われた経済成長も幻影と化し、新たな方向性を模索するときとなっている。この時期にスカイツリーが建設されるのはその意味でも象徴的である。新しく立ち上がるファロス(塔)の図像は何を象徴するだろうか。世界における東京は変化している。幾重の変化にさらされる時流のなかで今「東京」について改めて考えてみたい。

東京を考えるにあたり、今回のプロジェクトではまず東京を「見る」ことからはじめる。そのために東京の変化を眺める木造の展望塔を構築する。設置場所となるのは、現在、もっともその風景を変化させつつある隅田川の水辺である。

水辺は都市の政治、経済、交通、文化の発達に関わる重要な要素である。東京も河川とともに発達し、数百年の歴史を擁し独自の文化を築き上げてきたが、先の大戦で廃墟と化し既存の文化と断絶したことで逆に新しい都市を出現させることになった。しかし、めまぐるしく変化する都市の様相とは対照的に水辺は不可変の場であった。護岸工事や埋め立てでその表情が変わることはあっても、長きにわたって都市の変遷を眺めてきた場である。今、その水辺から東京を眺めてみたい。

今回の都市を概観するプロジェクトは、インターローカル(間-地域)の展開を通じて都市と水辺との関わりを比較検証する。東京のみならず世界のどの都市にとっても河川および水辺は重要な位置づけを有している。多くの産業や経済が発達する背景に河川や湾岸などの水辺がある。今、世界各地で水辺におけるアートプロジェクトを同時進行させている。ドイツ、ルール地方では国家的経済政策のため、長年、鉱業用水で汚染された水辺の再開発にアートプロジェクトが企画されている。フランス、ナントでもロワール河流域をめぐるアートプロジェクトが進行中であり、また南フランスの自然保護対象区域となる湿地帯のカマーグでも同様のプロジェクトが行われる。

中東のアブダビは石油マネーを背景に建国からわずか40年でいまの都市の姿を築きあげ、現在、アートを通じた都市整備プロジェクトが計画されている。かつて砂漠であった場所に急速に築き上げられる都市の姿はどこか東京と重なる。水辺において歴史とともに佇む都市と蜃気楼のごとく立ち現れる都市、今の東京の姿はどちらに近いのだろうか。

上記のプロジェクトすべてで物見台となる場を構築することを目指している。ドイツでの水辺の景観再開発、自然保護とツーリズムとの間で揺れるフランスの自然環境問題、そしてアブダビでの砂漠における都市の成立、そして転換期を迎え新たな都市の在り方を模索する東京、木造の物見台はそれぞれの水辺から都市の景観を比較検討する起点となる。そして、この塔はただ風景を眺めるためにあるのではなく、さまざまな人が集う場である。人々とともに共同で塔をつくることからはじめ、そして都市を眺める場と時間を共有する。塔から見えるものは、歴史と文化が異なる風景だけではなく、水辺が有するさまざまな知恵と可能性である。ここに関わるあらゆる人々が都市について思考し、その思考が集積することで塔というイメージのなかに新たな視覚的経験が現れることを期待する。

川俣正

http://www.bh-project.jp/artpoint/program/art/tokyo-in-progress-02.html