美術品を集め、それらを展示する美術館を建てるのはヨーロッパの伝統といっていい。だが、美術館などの「ハコモノ」を建てずに現代美術をコレクションする組織・制度が、地方、中央レベルでフランスにある。収集品を学校や教会などで無料で展示したり、国の施設で飾ったり。身近に接して鑑賞してもらう仕組みだ。
パリ市内の住宅街に立つ建物1階に入る展覧会場「プラトー」。イル・ド・フランス州の地方現代美術基金(FRAC)で総括責任者を務めるグザビエ・フランチェスキさんが、英国の現代美術家の展覧会の設営に追われていた。
FRACはハコモノを建てず、現代美術を収集する公的団体だ。1980年代前半に設立され、全国に22団体ある。同州のFRACは、文化コミュニケーション省と同州、パリ市から1年で計150万ユーロ(1億7千万円)の助成金を受ける。別に、同州から作品購入費30万5千ユーロ(3400万円)ももらう。
活躍している芸術家の作品を収集し、そうした作家が創作を続けていけるよう支援するのが第一の目的だ。ハコモノを建てずにコレクションするという考えは「新しいモデルだった」と、フランチェスキさんは言う。収集作品は倉庫に保管。年20〜30回、州内の高校や大学、教会といった歴史的建造物などに無料で貸し出し、展覧会を開く。展覧会会場で芸術家のワークショップを開催したり、展覧会先の職員向けに来場者を誘引するための研修も実施したりする。
(1)http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201010130331.html
(2)http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201010130331_01.html