Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

再録(http://d.hatena.ne.jp/n-291/20060329#p5)

ミシェル・ビュトール『即興演奏』 第十二章・五二「読解可能性」より

私たちが言葉を読むのには程度の差があります。テクストに大きな価値をみとめない場合、私たちはいくつかの段落を飛ばすことがよくある。展開がじつに凡庸なので、先がどうなるかわかってしまうことがある。私たちはページ上で自分の道筋を選択しています。指標から指標へと駆け抜けていきます。精読しようとするときでさえ、私たちの注意力にはさまざまな揺らぎがあり、そのため、たとえばこれまですでに二十回も読んだことのあるテクストについて講義を準備しているときに、新しいことを発見したりする。しっかり読んであったのに忘れてしまったものもある。しかしまた、それまではまったく注意を払わなかったものもあるのです。そして、これまで注意していなかったものの重要性を改めて私たちに示してくれるものこそ、私たち自身の批判的な思考、私たちの読書、私たちのエクリチュールの進展にほかならないのです。

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