Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

『アサヒカメラ』2011年12月号・191ページ 桐谷麗了子さんのコラム記事より

シャシンなコラム
ワークショップの不思議について考えてみる
(桐谷麗了子


東京・清澄白河のTAP Galleryで開催されている写真家・福居伸宏さんのワークショップを見学した。
 静謐な夜の街の写真を発表する一方、ブログ(http://d.hatena.ne.jp/n-291/)で写真、アート、音楽などの情報を発信している福居さん。その幅広い知識を聞く大学の講義のような内容を予想したのだが、実際は参加者に自らの作品を語らせる時間が大半だった。自分のワークショップを「カウンセリングのようなもの」と形容する福居さんは、知識と経験に裏打ちされた質問を投げかけ、参加者がより深く思考するきっかけを与えていたのだ。語ること、ひたすら作品について語り合うことが、福居さんの授業である。
「長い表現活動を支える核を育むワークショップがしたい」
 という福居さんは、「表面上だけの表現はすぐに見破られる」と繰り返した。表現活動の核とは、その人の生身の感覚に裏打ちされた思い、思想と言い換えられるのではないだろうか。
 思えばワークショップとは不思議なものだ。作品をもとに、自分や、自分をとりまく社会について真剣に語る時間。その会話には“混ぜ物ナシ”の純粋さが求められるように思う。表現することに対する恐れや既成概念への目配せのない言葉が作品を研ぎすましていき、磨き抜かれた作品が、作者や作品を見た人を豊かにしていく。その連鎖がどんどん広がって……そんな社会を思いながら味わう、ワークショップ後のビール。心地よく疲労した身体に、泡がしゅわしゅわと優しく弾けた。


ワークショップは年4回のペースで継続される予定。今後の開催の詳細はその都度、福居さんのブログで発表される。

http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=13235