Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

渡辺慧 - Wikipedia

量子力学の勃興期に渡欧した渡辺は、ド・ブロイ、ハイゼンベルク、ボーア等と直接交わり、処女作『Le deuxième théorème de la thermodynamique et la mécanique ondulatoire(熱力学の第二法則と波動力学)』(1935年)において、熱力学と量子力学の関係を解明し、熱力学におけるエントロピー概念の一般的な定式化を行う。熱力学的な物理現象の不可逆性に対する渡辺の強い関心は、ベルグゾンの哲学等の影響もあって、哲学的視野を含んだ時間の本質に対する探究へと進み、時間論の初期の名著とされる『時間』(1948年)、『時間の歴史 : 物理学を貫くもの』(1973年)、『時間と人間』(1979年)等の一連の著作に結実する。1980年の『生命と自由』では、こうした物理学的・哲学的思索を生命現象にまで推し進め、生命とは自由の追求であると主張する。
一方、エントロピー概念の情報理論への応用可能性に早くから着目した渡辺は、1969年の『Knowing and guessing(知識と推測)』において、人間の知的活動の基本要素である「知ること」と「推測すること」を数理的・定量的手段を用いて分析・再構成し、「認識学(epistemometrics)」を提唱する。また、1985年の『Pattern recognition(パターン認識)』では、知覚を中心とする人間の認識過程を機械と比較し、人間のパターン認識エントロピー最小化原理に基づく情報の圧縮であることを明らかにする。2つの与件を区別する有限個の述語が与えられたとき、その2つの与件に共通する述語の数は与件の選び方によらず一定であることから、すべての事物は同等の類似性を有することを証明した「みにくいアヒルの子の定理(Theorem of the ugly duckling)」は、述語の重要性を決定するのは人間の価値体系であることを示した点で重要である。
こうした理論的活動にとどまらず、実践的な著作も少なからず発表しており、戦時中においてもリベラリズムを貫き、『科学日本』、『帝大新聞』、『科学人』等の各誌で、戦争に協力した科学者を批判する。また、戦後は『思想の科学』の創立同人に加わるとともに、『中央公論』、『文藝春秋』、『婦人公論』等の各誌で、社会問題・女性問題についても積極的な発言を行った。敗戦直後において、マルクス主義から独立した社会主義論を構想した初期論文集が晩年に出版されている。

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