ふりかえってみると、あの時が峠で日本の運勢が、旺から墓に移りはじめたらしく、眼にはみえないが人のこころに、しめっぽい零落の風がそっとしのび入り、地震があるまでの日本、地震があってからの日本とが、空気の味までまったくちがったものになってしまったことを、誰もが感じ、暗黙にうなづきあうようになった。乗っている大地が信じられなくなったために、その不信がその他諸事万端にまで及んだ、というよりも、身の廻りの前々からの崩れが重って大きな虚落となっていることに気づかせられたといったところである。
http://www.amazon.co.jp/dp/4122044065
◇ どくろ杯|文庫|中央公論新社
どくろ杯
金子光晴 著
『こがね蟲』で詩壇に登場した詩人は、その輝きを残し、夫人と中国に渡る。長い放浪の旅が始まった――青春と詩を描く自伝。〈解説〉中野孝次
http://www.chuko.co.jp/bunko/2004/08/204406.html
◇ 金子光晴「どくろ杯」(中公文庫) - odd_hatchの読書ノート
http://d.hatena.ne.jp/odd_hatch/20110906/1315258721