『模造世界』（Simulacron 3）
著者 ダニエル・Ｆ・ガロイ 訳者 中村 融
出版社: 東京創元社 ; ISBN: 4488713017
●ストーリー
仮想空間技術を応用した画期的な社会環境シミュレーター「シミュラクロン−３」が完成間近となっていた。技術者ダグラス・ホールは、事故死した上司フラーの仕事を引き継ぎ、研究を続けていた。だがある日、会社の同僚から「あの死は事故ではない」と告げられる。そして彼はその直後に姿を消してしまう。しかも誰もがそんな男は知らないというのだ…。
●感 想
仮想空間をネタにしたＳＦ作品。本国での発表は1964年。ちょっと古めの作品で、コンピュータ技術などのハード的な描写がほとんどないのだが、そのおかげで今でもそれほど古さを感じずに読める。“現実”が揺らいでいく感覚はディックの小説にも似た印象。ミステリー仕立ての構成で楽しめる。ＳＦ好きの人なら、ある程度先の展開が読めてしまうかもしれないが、軽く楽しめるＳＦミステリーに仕上がっている。多重構造の仮想世界アイデアが面白い。ヴァーチャルリアリティの技術面を詳しく描いた最新ハードＳＦが読みたいという方にはＪ・Ｐ・ホーガンの『仮想空間計画』がお薦め。
http://www.geocities.jp/winter_hawk_87/Revew2/Simulacron3.html
