テラン・ヴァーグ
Terrain Vague
その場所で起こったさまざまな出来事を想起させながらも、もはや空虚で、何からも放棄され、定義が曖昧で不安定な状態の都市空間を指すフランス語。スペイン・カタルーニャ出身の建築家/歴史家/哲学者であるイグナシ・デ・ソラ=モラレス・ルビオーが造った言葉である。1994年のAnyカンファレンス「Anyplace」で初めて発表された。ソラ=モラレスは、機能性を失った空き地などの都市空間が資本主義原理のもと利益優先で開発される一方で、都市空間の廃れて生産性を失った状態での価値を主張し、テラン・ヴァーグは自由で匿名的な都市の現実を表象するとした。テラン・ヴァーグは単に場所を指す言葉ではなく、都市を撮影した写真のなかに現われるイメージであり、都市の内部に存在しながら外在的な他者として出現する未知の空間であり、集団の記憶や歴史的時間が密接に作用して認識される都市の無意識である。フランス語の「terrain」は英語のそれに比べ都市的な意味合いをもち、「vague」の語源には「波」「空虚」「曖昧」など多重のニュアンスがあり、テラン・ヴァーグを英語や他の言語で短い熟語に言い換えることは難しい。
著者: 松原慈
参考文献
『10+1』No.7,「〈無人〉の風景 建築が見る〈不眠の夢〉」,田中純,INAX出版,1996
『10+1』No.6,「〈光の皮膚〉の肌理(きめ) 都市写真という寓意(アレゴリー)」,田中純,INAX出版,1996
『Anyplace 場所の諸問題』,「テラン・ヴァーグ」, イグナシ・デ・ソラ=モラレス・ルビオー(田中純訳),NTT出版,1996
◇ 〈光の皮膚〉の肌理(きめ)──都市写真という寓意(アレゴリー) | 田中純 ‹ Issue No.06 ‹ 『10+1』 DATABASE | テンプラスワン・データベース
http://db.10plus1.jp/backnumber/article/articleid/807/
◇ 〈無人〉の風景──建築が見る〈不眠の夢〉 | 田中純 ‹ Issue No.07 ‹ 『10+1』 DATABASE | テンプラスワン・データベース
http://db.10plus1.jp/backnumber/article/articleid/236/