◇ 8zm--Work in Progress──前田一 デジカメWatch Web写真界隈
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/webphoto/2007/08/30/6937.html
内原恭彦さんによる前田一さんのインタビュー。
個人的に、前田さんは現在最も重要な写真家の一人だと思っています。
もちろん、日本とかいう括りじゃなくて、世界で。
http://d.hatena.ne.jp/n-291/searchdiary?word=%c1%b0%c5%c4%b0%ec
記事中に掲載されている写真のセレクトが、想定される読者層に
やや歩み寄ってしまっているように思えるのが残念ですが、
前田さんのサイト(http://8zm.boo.jp/photograph/)のほうには
たくさん写真がアップされてますので、
ぜひそちらをご覧になってください。
たとえば、眼筋がサッと緊張したときの中心固視の瞬間、
身体が揺動している最中(ex.何かに反応して首をめぐらせたとき)に視界によぎったもの、
急激な明暗の変化によって一瞬視界が奪われた直後に眼に映った像、
フリッカー現象に眼が反応して思わず最も明るい状態(または暗い状態)を捉えたとき、
なんかを、前田さんの写真を見る人が想起し、それぞれの過去の経験(記憶)と結び合わせることができれば、
それほど「わからない写真」でもないのではないでしょうか。
写っている映像自体はとりたてて難解でもありません。*1
それを興味深いものだと思うかどうかは別にして。
前田一さんの写真の魅力は、glimpse[一瞥]をbehold[注視]するという経験の純度の高さにあると思います。*2
それはもちろん、レンズの前の対象*3が撮影され、写真として定着されることがもたらす効果に由来します。
かつてどこかにあった瞬間を、いまここ*4の流れている時間の中で静止し続けるものとして「見る」ことができるという。
ただ、そうしたごくあたり前の効果に意識的であり、かつ、自分の表現にうまく採り入れることができる写真家が、
あまりにも少なすぎるのが現状ではないでしょうか。だから、前田さんのような作家が目立つのかもしれません。
あと、前田さんが「裏」なら、「表」は小山泰介さんでしょうか?*5
両者の写真を愛好する鑑賞者の趣味(フェティシズム)が異なり、
受容のされ方が少々違うというだけで、けっこう共通する部分もあると思います。
わかりやすくて、消費されやすいのは後者だと思いますが。*6
ただし、単にフェティシズム*7だけで前田さんや小山さんの写真を「見る」のは、もったいないと思っています。念のため。
※ちなみに「Web写真界隈」の過去の記事には私のインタビューも掲載されています。
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/webphoto/2007/04/05/5996.html
(補足)http://d.hatena.ne.jp/n-291/20070405#p2
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20070410#p2
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20070408#p7
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20070407#p3
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20070409#p7
*1:ただし、判じ絵的になりすぎていて、その効果に頼っている写真は、
それほどうまくいっていると思いません。
*2:フリードリヒ・キットラーの著書をもじった、この小ネタ→http://d.hatena.ne.jp/n-291/20070424は前田さんの写真にも触発されています。
*3:前田一さんの場合、「対象」というよりも「光」という言葉のほうがよりふさわしいかもしれません。
「被写体」とか「シャッターチャンス」とかいった言葉のくびきに囚われているかぎり、
なかなか前田さんの写真は「見えてこない」でしょう。
*4:やば、使っちゃった。この言葉、恥ずかしいと思ってしまうのは、私だけ?
と、言いつつも使ってますが。。。http://d.hatena.ne.jp/n-291/20070211#p10
*5:・前田一さん 流動→ヨコ位置→定着
・小山泰介さん 固定→タテ位置→定着
*6:小山泰介さんも好きな写真家の一人です。http://www.tiskkym.com/
写真の質と量を見る限り、消費されても、消費され尽くさないタフさも兼ね備えているように思います。