Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

「大衆はなぜすべてのことに干渉するのか」 - 本と屁爆弾

つまり、「自分には論理的に思考する資質がない」と自覚できる程度に大衆は利口なのである。が、それゆえに「自分の判断を誰かが求めている」と思いたい虚栄心があり、大衆の内部において後者の動機による自己表出の欲求のほうが勝つときに「権利としての凡庸」が強行される。しかし他人に評価されたがるその意見の中身はせいぜい物事への賛否か好き嫌いの区別ぐらいでしかないがために、その口ぶりが否応なく紋切り型にならざるを得ないということなのだろうか。本の第一部第八章「大衆はなぜすべてのことに干渉するのか、しかも彼らはなぜ暴力的にのみ干渉するのか」で示されている大衆的自己閉塞メカニズムのポイントを上記のように要約すると私にはそう読み取れるのだが、1930年に刊行されたこの本はまさに現代日本の「いま・ここ」の問題提起として見えるだけでなく、ネットの醜悪口論やコメント粘着などのように相互憎悪を生み出す人間の喧騒がそもそも何から始まるのかという疑問への本質的な解答そのものでもあるかのようで、オルテガが呈した大衆分析の先見的な明晰さにあらためて驚く。

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j0hnさんのブックマーク経由。


オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』(ちくま学芸文庫 訳:神吉敬三)
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http://www.bk1.jp/product/01199659


松岡正剛の千夜千冊『大衆の反逆』オルテガ・イ・ガセット
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0199.html