コーヒー農園になんて行ったことはない。コーヒーは毎日飲んでいる。コーヒーが世界の何カ国で生産されているかなんて知らない。それでもコーヒーの種類はそれなりに幾つも知っている。ほかにも無知がいっぱいあって、それなのにカラダがいろいろ覚えている。香りとか。酸味とか。苦味とか。コーヒーが誕生したのはエチオピアだって聞きかじったけれど、つまり、人類も誕生したアフリカ大陸からコーヒーも生まれてきたってことなのか。じゃあコーヒーって「全部」じゃないか。そこで、たとえばコーヒーを音にしてみる。CDにしたり、ライブにしてみる。それどころか誰もが参加できる「体験」にしてみる。まずはわれわれ3人からはじめるけれど。まずはわれわれ3人が、等しい距離でコーヒーに接するけれど。つまり、だ。コーヒーが歌とトラックと小説を交わらせる。それから続々、いろんな人間を交わらせる。疑問をひとつひとつ解いていく。コーヒーの実は赤いのか、青いのか、それとも未知なるものなのか。色を塗るようにたしかめる。音を塗るようにコラボする。いまから判明していることはひとつだけ。このプロジェクトは coffee だから絶対「覚醒」するはず、だ。
古川日出男 小島ケイタニーラブ 蓮沼執太
アートワーク:近藤恵介