Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

id:heliographさんのはてなダイアリーより+α(インターネットの仕組み)

◇ 西井一夫と藤原新也 - Heliograph(太陽の描く絵)

 本人が削除したので、西井一夫についてのどのように書いたのか、よく覚えていないのでやめますが、藤原新也のモノクロ写真に対する見方、マグナム的なフォトジェニックに対する批判的な見方について、西井一夫が『20世紀写真論・終章ー無頼派宣言』西井一夫著(青弓社)で藤原新也についてどう書いてたのかを一部引用しておきます。

 入院中に雑誌「フォーカス」が休刊し、私の友人がメールで次のように言ってきた。

「ところで、先日、朝日新聞藤原新也とかいう男の“フォーカス廃刊にあたって”という評論が載っていたが、俺はじつにくだらないと思った。どうして、あんなのが威張っているんだ。フォーカスが商業写真雑誌として破綻していったことと“白黒写真にこだわる写真家集団のひとりよがり”と、最近の若者の私的写真嗜好とどういう関係があるっていうんだ、とクダをまいておりまする。早く、退院しろ!このあほんだら」

 彼は、センシブルなやつで、私は、やつのセンスを信じているので、さっそく「あんなの」が書いたコピーを送ってもらい読んでみた。結果、そのとおりじつにくだらなかった。ストレスが内向したために、いささか攻撃的に姿勢が傾いている。が、だめだぁこりゃあ。藤原が書いていることはその論理に従えば、「フォーカス」という雑誌が、「LIFE」と同列の“大論”を背負った雑誌であり、マグナムと「フォーカス」の写真もやはり同列で語られる、芸能スキャンダルさえ“大論”の範疇に入るらしい。あきれかえって言葉がない。ここにあるのは、“現在写真に興味を示す新しい世代”への全面降伏にすぎない。つまり、これらは唯一信じることのできる“個人の日常”にレンズを向ける子どもたちに受けない、というただの消費社会の市場原理からすると、当然の帰結といえる “旧世代”の退場になんの留保もなく塩を投げ、“大論”が何であったかを問いもせずに、ヒキコモリを前提なしに肯定していく若者への過度の“おもねり”であるように思えた。私自身は、別段“旧世代”とやらを擁護したいとは思っていない。ただ、藤原さんよ、これじゃあまりに論理が破綻しています。“大論”時代が終わり、利益だけが求められる<市場>がひとり勝ちしたと現状追認してるだけ。「LIFE」は「フォーカス」と同列に語りえぬ“大義大論”をもっていた。“ヒューマニズム”“人道”……。タイトルにLIFE=命と銘打っている、それなりの歴史的必然を背負った時代がたしかにあったのだ。その命がじつはアメリカ人のための命のことにすぎなかったという事実が「LIFE」の命取りとなったのだ。「軒並み休刊に追い込まれている」「写真雑誌」は、出版不況=<市場>の波をいち早く被った「大きな流れのなかの一点景にすぎない」というが、ここでご自身が使用している“大きな流れ”そのものが、若者がまったく興味を感じえない“大論”にすぎないのではないか。はっきり言えば、私は、若者が興味を感じようが、感じまいがどうでもいい。そんな<市場>はほっとけばいい。私は私の道を行く、友達ならそこのところうまくつたえてぇ……??

大義大論”はいま必要だ。個人など、もっとも信じるにたりない卑怯者にすぎない。芸能スキャンダルにさえまったく興味を感じえない“新しい世代”とやらが小泉構造改革とやらにバカな興味を感じているのは、では、なぜか?

 私の推察では、写真雑誌にかぎらず、たいていの雑誌や書物、メディアつまり言論が表向きには“理性の声”でしか語られてこず、私的な“呟きの響き”はつねに排除されてきた、その絶えることのない呟きが聞き届けられないという諦念が、おそらく呟きそのものを大切にしたいと思う、弱々しいが、絶対的確信に満ちた呟きの連合をつくっていて、そういう人たちは言葉を駆使できないから、畢竟カメラという手軽な自動表現装置に飛びついてただけのことだ。「フォーカス」には「報道写真家の集団マグナムに代表されるような深刻ぶったモノクロ写真」などは一度も掲載されたことはなかった。はっきり言えば、「ドロドロドキドキした誌面」もなかった。最終号の“密会大全”なるページでも、噂の二人は、ぜんぜん無関係な二人として、互いにそっぽを向いているのに、キャプションだけが、ふたりの“ドロドロの人間関係”を“愛人”だの“朝のゴミ出し”だのと騒いでいるだけだ。藤原は、たしかに最初から素人の旅行者としてカラー写真に文章を添える手法でデビューした。だから、モノクロに対するあからさまな蔑視は素人ゆえに問わないが、マグナムを「深刻ぶった」とは許せない。深刻だったのだ。キャパが命を落とすほどには。新しい世代は、キャパにもどうせ興味を感じえないだろうが、知ったことか!キャパは写真を言葉で解説したり、説明したりする愚はしなかった。『ちょっとピンぼけ』は、写真ではなく人生を語ったものだ。ノルマンディー上陸のDデイでキャパの撮った写真はブレている。あまりの恐怖に手が震えて、フィルム交換さえできなかった、彼は怖さであとずさり、上陸用舟艇に引き返している。写真論とは、写真を解説する言論のことではない。写真評論も、写真説明ではない。写真、そして写真家というものが、この世界でこの同時代にどのように在るのか、なぜそうなのかを批判的認識によって論ずるものだ、と私は思っている。これ以上突き詰めると嫌味になる。話題変更。

http://d.hatena.ne.jp/heliograph/20100524
この引用は、「付録「フォーカス」の休刊と藤原新也」から(当該箇所はP302-305)。
末期がんによるホスピス入院中に書かれた、西井一夫さんの最晩年の文章のひとつです。
ただし、309ページからの「さらなる後記」も併読すべきだと思います。
また、260ページを読んでみれば、西井一夫さんが藤原新也さんの『東京漂流』は評価していたことがわかります。


◇ 20世紀写真論・終章――無頼派宣言 写真叢書(西井 一夫・著) - 青弓社
http://www.seikyusha.co.jp/books/ISBN978-4-7872-7144-0.html
http://www.amazon.co.jp/dp/478727144X

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あと、藤原新也さんはインターネットの仕組み(アーキテクチャ)をよくご存知ないのかもしれません。
それに、藤原新也さんには加筆変更癖がありますし、
ウォッチャーが少なからず存在しますから(http://d.hatena.ne.jp/n-291/20070404#p4 http://d.hatena.ne.jp/n-291/20081031#p7)、
センシティブな問題に言及したときは毎回魚拓くらいはとられてるでしょうし。


>>>所幸則氏というコマーシャル・カメラマンの方のブログが非常に香ばしいです。切込隊長山本一郎さん的な意味で。

おわかりではないのかもしれませんが、基本的に一度ウェブ上にアップした文面は完全に消去することはできません。
どこかのキャッシュに保存されてますし、見てる人は見てるので、

http://d.hatena.ne.jp/n-291/20090103#p2


>>>mixi掲示板より抜き書き

“しかも、今の時代はその形跡を消去することは不可能です。
つまり、ことWebにおいては「はかなさの獲得」など
幻想にすぎません。Web上に存在した時点で
どこかだれかのハードディスクなりサーバなりに、
その情報は格納されてしまいます。 ”
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=7694259&comm_id=500838&page=all

http://d.hatena.ne.jp/n-291/20061123#p3


>>>東浩紀「情報自由論」(全文)

http://www.hajou.org/infoliberalism/

http://d.hatena.ne.jp/n-291/20070621#p4
http://d.hatena.ne.jp/n-291/searchdiary?word=%BE%F0%CA%F3%BC%AB%CD%B3%CF%C0

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http://seiichirou.tumblr.com/post/626436481


◇ つまり一体に言えることは要するに”社会と切り結ぶ”ユージン・スミスやキャパや、難民をまるで泰西名画のよ... - f0.7
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