JI 豊田市美術館の展示はヴェネツィア・ビエンナーレのプロジェクトに近いです。豊田の一部がビエンナーレのものということもありますが、豊田の場合は会場が大きいので、建築の大きさを取り上げて、「美術館」で行う「建築展」にしたいと思っています。建築展というと、なかなか専門家以外は楽しめないと思われていますが、それはなぜかというと、建築は別のところに実際に存在して、展覧会は2次的なものとして表現されていると思われているからです。でも、建築展も別の考え方をすればものすごくリアルなものに結びつけられると思います。建築の長所は、その作品だけで完結するのではなく、それがリアルなものとして立ち上がる可能性を与えられることもあるので、そういう部分を引き出す新しい建築展を実現したいと思っています。ビエンナーレに出品する模型に近い、しかし大きく引き延ばしたサイズの模型を5つ展示する予定です。非常に大きいものとなるので、ビエンナーレよりも効果的だと思います。近接性、可視構造、新しい都市の提案が5つ。ここでは、建築の大きさの可能性をテーマにしています。
資生堂ギャラリーの展覧会は、テームズ&ハドソンというロンドンの出版社から来年出版される本の内容を模型で見せる模型展です。豊田が少し抽象的な模型展だとしたら、こちらは具体的で小さく、かわいらしい模型をたくさん見せます。模型だからこそ見せられるような楽しいものです。豊田では空間を見せるので、資生堂ギャラリーでは建築家の構想力を見せるような展覧会にしました。
ART iT 建築や美術の展覧会はよくご覧になりますか。また、特に心に残った展覧会はありますか。
JI 建築の勉強を始めたばかりの学生の頃に観たTNプローブのレム・コールハースの『OMA IN TOKYO:レム・コールハースのパブリック・アーキテクチュア』(1995–96)がとても印象に残っています。ボルドーの住宅やフランス国立図書館のコンペ案、パリの大学図書館など、あの時代のコールハースが一番好きなのですが、それを生で観ることができたということが刺激的でした。コールハースの展覧会は他の建築家の展覧会と違って、建築の生々しさというか、臨場感がダイレクトに伝わってきて、それが強く印象に残っていますね。
ART iT 石上さん自身はいくつかの展覧会に参加してきた経験から展示空間の設計をどのように考えていますか。
JI 美術館に限らず、建築というものは空っぽの箱としてそこにあるというよりは、ごちゃごちゃと使われていくことでよくなるものの方が魅力的だと思います。そういうことを許容できる建築でないと現代的ではないので、権威的な美術館を作るのであれば、僕としては建築の可能性を感じません。美術館といえば、いろんな作品が入ってくる可能性を当然考えますし、同時に美術館としてではなくても使えるような可能性も考えると思いますね。
http://www.art-it.asia/u/admin_ed_feature/aXwxAbiGZ0kvqtljonJh
>>>石上純也さんがヴェネチア建築展で金獅子賞を受賞
http://d.hatena.ne.jp/n-291/searchdiary?word=%A5%D9%A5%CD%A5%C1%A5%A2
※過去の The Venice Architecture Biennale 関連
http://d.hatena.ne.jp/n-291/searchdiary?word=Architecture%20Biennale