Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

グレゴール・シュナイダー『死は芸術作品か?』所収「ハインツ=ノルベルト・ヨックスとの対話」より

HNJ ヴェニスビエンナーレのために考案され、結局はハンブルクで実現された「黒い立方体」の作品は、宗教をテーマとしていた。「死者の部屋」でも宗教は何らかの役割を演じているの?
GS 今日、死は主に医療のテーマだ。葬儀は宗教に寄って規定されている。 [略] 現存の儀式はもっと個々人が求める願望に対応してもよい頃じゃないかな。遺灰をダイアモンドに固めるというダイアモンド葬から宇宙葬に至まで、人によって様々な解決法があるわけだ。最新の葬儀は環境に優しい埋葬、いわゆるプロメッションだね。遺体を液体窒素で冷却して振動を与えると、臭いも何もない細かな粉末になる。水分が抜けるので重量は元の3割に減っている。それを生分解性の棺に納め50cmの深さで埋葬すると、すべては 6−12ヶ月で腐葉土に変化するというわけだ。

HNJ 君の眼に映る美術館とは何なんだ?
GS 特別監房。実際に部屋を作るにはそもそも最も難しい場所だ。いまだに美術館というのは絵画やアクリルマウント写真のための高貴なブティックとして建造されている。 [略] 美術館を出れば、スラムの住居が見える。段ボールと波板トタン屋根で拵えられた家で、ちょっとの地震にも耐えられまい。人々の頭の中にはあいかわらず美術館という物の決まったイメージが存在している。過去の美術史の展開に合わせて建造されてきたため、美術館はほとんど変化していない。 [略]


◇ PUBLICATIONS > 死は芸術作品か? - WAKO WORKS OF ART

Gregor Schneider
グレゴール・シュナイダー


"死は芸術作品か?"


2010.10.12
18.9x11.6cm
96ページ
\1,500.-
ISBN 978-4-902070-36-1


芸術、死、部屋をめぐるハインツ=ノルベルト・ヨックス(アートライター)との対話、アニタ・シャー(美術評論家、キュレーター)による評論「闇の中へ。黒い美術館」、そしてグレゴール・シュナイダーによるハンネローレ・ロイエンへのインタビュー、以上3編のテキストを39点の図版とともに収録。森大志郎デザインによるテキストシリーズ第3弾。

http://www.wako-art.jp/publications/gregor_schneider/das_sterben_als_kunstwerk/


◇ グレゴール・シュナイダー「Toter Raum, Tokio 2010 (死の部屋)」@WAKO WORKS OF ART
開催中〜11月27日(土)

このたび、10月12日(火)より、グレゴール・シュナイダーの個展 “Toter Raum, Tokio 2010(死の部屋)”を開催致します。


8年ぶりの個展となる今回、死者のための部屋「死の部屋」をギャラリー内に建設します。


作家が長年にわたって制作しつづけてきた「部屋」の作品とは、人々がそこに入り、体験することで生じる記憶と積み重ねられる時間によって際限なく変化していくものです。一貫して未知のもの(体験や認識)、不可視のものを追求してきたアーティストが、究極の未知である「死」をテーマとした部屋の制作に至ったのは必然であるといえます。「死は決してタブーではなく、生と同等の尊厳をもって受け止められるべきものである」というシュナイダーが、死者のために制作したこの部屋は、生と死という、わかちがたく結びついた二つの要素についての考察をうながします。


シュナイダーは、16歳の頃から、自宅の既存の壁の内側に別の壁や窓をつくることであらたな空間を創造する、という行為を繰り返していました。未知の空間についてのアーティストの探求は、私的な空間からパブリックな空間へとその範囲を広げ、2005年には、イスラムカーバ神殿を模した黒い立方体の作品をヴェニスサンマルコ広場に建築しようと計画、また2007年には、伺い知ることのできない収容所の内部を美術館内に再現するなど、大規模な展開を見せています。また彼は、ギャラリーや美術館の中に真の暗闇をつくり出した作品などによって、不可視のものへの恐怖心、同時に否応無くわき起こる好奇心といった、隠された感情と対峙する場を生み出し続けています。


本展に合わせ、テキスト・シリーズ第3弾「グレゴール・シュナイダー:死は芸術作品か?」を出版致します。

http://www.wako-art.jp/


>>>グレゴール・シュナイダー関連 ブックマーク棚卸し
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20100827#p6


※過去のグレゴール・シュナイダー関連
http://d.hatena.ne.jp/n-291/searchdiary?word=%A5%B0%A5%EC%A5%B4%A1%BC%A5%EB%A1%A6%A5%B7%A5%E5%A5%CA%A5%A4%A5%C0%A1%BC