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いま長谷川堯が再読されるのはなぜですか? | 中谷礼仁 ‹ Issue No.49 ‹ 『10+1』 DATABASE | テンプラスワン・データベース

Why Reference Takashi Hasegawa's Work Now? | Nakatani Norihito
掲載『10+1』 No.49 (現代建築・都市問答集32) pp.146-147


長谷川堯は建築評論家である。彼の一連の著作、そのなかでもとりわけ重要な初期の著作集が書店から姿を消して久しい。興味を持つ少数の人は、それらを所蔵する図書館に行くか、あるいはなけなしの金をはたいて古書店でそれを入手するかであった。著者も二十代の頃そのようにして彼の本を手に入れた。だから氏の著作集が復刊されることになったことはすばらしいことだと思う。
しかしなかでも、当方が自ら入手した『神殿か獄舎か』(相模書房、一九七二)は、復刊決定後においてなお、なけなしの金をはたいて買ったことがぴったりくる本であったという印象が消えない。文字通り心血を注いだ著作に対して、読者がその「血」を買った。そんな特別な取引が成立しえたという希有な書籍であったという意味においてである。

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