◇ 中原浩大《海の絵》──創造の原基「能勢陽子」:アート・アーカイブ探求 - 美術館・アート情報 artscape
岡山県倉敷市生まれの中原が、日曜画家の父親と一緒に大原美術館へ行ったのは小学校に入ったばかりの頃だったという。中学生になって「この中には、将来絵かきになって通用する奴は多分おらん。けど彫刻なら、ひょっとしたらひとりおるかもしれん」(中原浩大「お絵かきコーちゃん」図録『KODAI NAKAHARA』)と美術の先生の一言で彫刻家になる決心をした中原少年。従来の重い彫刻のイメージを覆す絵画的な想定外の彫刻を作り、価値観を揺るがす軽業をさらりと見せてくれ、一瞬にして見る者すべてを楽しかった子どもの心が住む世界へと連れ戻す。この不思議な中原作品の特徴を豊田市美術館主幹学芸員の天野一夫氏が次のようにまとめている。
01 流動し、不断に生成の途上として意識されている造形感覚
02 歴史性が顧慮されること無い素材観とメチエへの不信
03 加工無しの造形の単位体の明示と全体性の不明
04 他の物質との意想外の接合
05 何重かの読みの中で中吊りになっている造形
06 絵画性など、他のものとの開かれた関係を持った造形
07 分裂したままの身体拡張装置の欲望
08 形とそのあるべきスケールとのズレ
09 極私的な妄想が現実化したかのようなワイルドなイメージ
10 「美術」という固有のフィールドへの相対化の意志
(天野一夫「変成態のために──〔彫刻〕の現在」『変成態──リアルな現代の物質性』p.10より引用)
《海の絵》は「バーネット・ニューマンの水彩、インク、混合メディアによる小品との類似を許す」(藤枝晃雄『美術手帖』No.627, p.195)と、ニューマンの《抽象》(1945)との類似性を指摘されているが、ウキウキ感のあるジョアン・ミロの《アルルカンのカーニヴァル》(1924-25, オルブライト=ノックス美術館蔵)を、中原が引き継いでその純度を高めたともとらえられるのではないか。かつて村上隆は「中原浩大の、特に《海の絵》とかあの辺の絵画作品というのは、現代美術というか未来芸術、未来絵画だと思っていて、絵画というものの存在意義が本当に無いぎりぎりのところまで行っても、なお絵画たらんとするような感覚というのが感じられるのです。今思い返してもあの絵を見た瞬間の潤いというのは初めて飲んだ自然水の爽やかさと不自然さをごった煮したような感覚。僕はそれに、しばらくは追従していたのです」(村上隆「芸術とは何か」『思想地図 vol.4』p.103)と発言している。
http://artscape.jp/study/art-achive/10053736_1984.html
◇ 2008/07/08 (Tue) - takashi yamauchi : omolo.com
制作のための12の注意事項
一、あたかも虫が飛んできて、そのままそこに止まったかような心の動き。
二、作業にはけっしてしばられない。
三、近づくと、視野が広がる。
四、はじめからそこに在ったかのような、もしくは瞬間に出来上がったような。
五、色、そこから光はそこに残る。
六、壁に静止している虫は重さを壁に委ねていない。
七、小さくて小さくて大きい大きくて大きい小さい、そんな。
八、そこがどこから始まるのか、わからない。
九、測られることを拒む。
十、こわそうと思えばこわせる、あるいは保存しようと思えば保存できる。
十一、見ると見つけられてしまう。
十二、見るたびに忘れてしまう。