Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

CITY OF SHADOWS / Peter Doyle - Books & Things

CITY OF SHADOWS / Peter Doyle
2006, Sydney, 239 pages, 217 x 313 x 25

またひとつ歴史的価値のある写真資料が救われた。
1912年から1960年頃までのニュー・サウス・ウェールズ警察が撮影した法廷犯罪関連の写真資料約4トン。ガラスプレートのネガやフィルムのネガが多く含まれており、古いネガの多くは、欠けていたり、擦れたり、お互いにくっ付いたりしていたが、Peter Doyle によって少しづつネガの整理と現像が行われた。そして2005年にシドニーのJustice & Police Museum にて、それらの写真を公開する“City of Shadows” 展が開催され、展覧会に合わせて刊行されたのが本書である。
1912年から1948年までのシドニー警察が撮影した犯罪や事故にかかわる写真の数々は、単なる現場写真を越えた、バックグラウンドを示す貴重な歴史的資料でもある。事故や犯罪現場に集まる人々の風俗、建物、建物内部のインテリア、商店。1920年世界恐慌時に“Happy Valley” と名付けられた移民集落の模様、1929年に起きた“Rothbury” の炭鉱夫と警察との衝突。そして“Mug shot” 犯罪容疑者の顔写真。それらは上半身と全身がそれぞれ撮影され、名前やID番号が記されている。男性の多くは、中折帽子やキャスケットにジャケット姿であり、その当時の典型的なファッションを読み取ることができる。また、犯罪容疑者の写真であることが予め分かっていなければ、どこかの写真館で撮影したようにも見えてしまう。
パリのアジェ、ストーリヴィルのベロック、ハーバート・スプリングのディスファーマーらのような一人の写真家の業績ではないが、シドニー警察写真課によるプロフェッショナルな仕事は、高い評価に値するものだと思われる。

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