Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

トリン・T・ミンハ『ここのなかの何処かへ――移住・難民・境界的出来事』日本語版刊行記念 上映&トークイベント - UPLINK

1980年代以降、ヴェトナム系アメリカ人女性としての自らの異質性を足場とし、領域横断的に思考しながら旅するなかで独自の文化批評空間を立ち上げてきたトリン・T・ミンハ。約20年ぶりに満を持して放たれた今回の評論集には、これまで明かされることのなかった故国ヴェトナムにおける出自の物語に加え、日本文化論、人種主義の亡霊が回帰するアメリカや3・11後の日本といった現実政治への直接的言及など、彼女の新たな一面が垣間見られるエッセイが数多く盛り込まれている。


イベントでは、トリンと長年にわたり対話を続けてきた訳者の小林富久子がホストとなり、文化人類学者の今福龍太、詩人の吉増剛造をゲストに迎え、今回の著作とも関係の深い映像3作品――出世作にして最高傑作と名高い『ルアッサンブラージュ』、ヴェトナムにおける女性史を綴った『姓はヴェト、名はナム』、日本を対象にした『四次元』――を改めて観直すことで、トリン・T・ミンハの足跡を辿り直すとともに、その魅力の真髄に迫る。


“elsewhere, within here”――ここのなかの、何処か別の場所へ。自己と他者、内と外、主観と客観、日常と非日常、西洋と非西洋、中心と周縁…。そのいずれにも属することなく二項対立の境界線上にとどまりながら、世界を翻訳し、揺さぶってみせる。トリン・T・ミンハの越境の詩学は、未だ強度を失うことなく私たちの世界を見る目を相対化し、思考を刺激してやまない。

http://www.uplink.co.jp/event/2014/26170