Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

ル・コルビュジエのブルータリスム研究(21520142) - KAKEN

2009年度〜2012年度
伊集院 敬行
研究者番号:90304245
島根大学・法文学部・准教授

本年度は、ル・コルビュジエのブルータリスムのシュルレアリスム性を説明する理論として、ル・コルビュジエの機械美学を映画理論と接合した中井正一(1900-1952)の美学について考察した。これまで全く論じられていないが、中井は映画をハイデガーに即して論じるために精神分析理論を応用している。そこでは映画は精神分析が行われる場、すなわち無意識のエスが暴露される場として理解され、これが現存在の本来的在り方と重ね合わされた。一方、中井はル・コルビュジエの機能美学を存在論的に論じたり、映画と結びつけて論じたりしている。

23年度は、主にこの点を強調したけ研究成果を、日本映像学会の第37回大会(於:北海道大学)、意匠学会の大会(於:国立民族博物館)で口頭発表した。前者では主に中井の映像論の精神分析的側面について、後者では中井のそのような映像論とル・コルビュジエの機械美学との関連についての考察を発表した。また、現在、『映像学』に研究成果をまとめた論文を投稿し、審査を受けている。

さて、中井が「機械美の構造」で映画とル・コルビュジエの機能主義美学を結びつけていることから、このような中井の映画の精神分析的理解は、ル・コルビュジエの機能主義美学にも当てはまると考えられる。これを踏まえるなら、ル・コルビュジエの後期スタイルであるブルータリスムに見られるシュルレアリスム性について、映像論的、精神分析的、存在論的な考察が可能になる。そして、これにより、単純な機能主義的からはみ出るものとしてモダンデザインの再定義が可能になるだろう。

http://kaken.nii.ac.jp/d/p/21520142