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福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

Japan and World Trends [日本語]: コーラン 読みもされずに誤解されている経典

コーラン岩波文庫から日本語訳(上中下3巻)が出ていると言っても、これを読んだことのある人はほとんどいないだろう。僕は読んだ。それも全巻。ウズベキスタンで勤務していた時、この社会を理解するため読まねばならないと思って。本当に・・・・かった。

このコーランというものは、書物として、しかも日本語訳で読んで有難さがわかるものではなく、あのオリエントの諸都市を1日5回、深遠な祈りの声で満たすアザーン、つまり朗読として聞いて初めてそのご利益がわかる。アザーンというのは本当に、体に浸みわたって麻痺させるような心地よさを持っている。だから、「コーラン」(Qur'an)とは読誦、「イスラム」とは絶対的な帰依を意味するのだそうだ。

読誦で無我の境地に入るというと、全世界に広がるシャーマニズムの風習を思い起こす。イスラムは西暦7世紀に成立した新しい宗教だから、それまでオリエントの各地に伝わってきた習俗や宗教を集大成したところがあって、シャーマニズム的要素があるのも不思議でない。

岩波文庫コーラン」の下巻320頁によれば、アラブには元々「カーヒン」というシャーマンがおり、「聖石」崇拝が浸透していたそうだ。メッカのあの壮大な神殿の真ん中にある黒いお堂が「カーバ神殿」だが、そこの一角にはイスラム以前からここで崇められていた黒い石がはめてある。写真を見ると、黒く卵型のすべすべした、まるで隕石であるかのような不思議な石だ。

そしてこの神殿の近くには、旧約聖書に出てくるあのユダヤの族長アブラハムの妾が、本妻に虐げられて息子イシュマイル(アラブ人の祖とされる)と砂漠を放浪、死にそうになったところで天使に泉を示される、そのザムザムの泉が今でもある。そこの水はメッカで売られているし、イランではザムザム・コーラというのが販売されている――というのは今回、インターネットで知った。

http://www.japan-world-trends.com/ja/cat-1/post_1145.php


◇ 2004/04/19 イスタンブール ブルーモスク アザーン / Adhan @ Sultan Ahmed Mosque - YouTube
http://youtu.be/8b_36lGAvoo