Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

[シリーズ6:“音”の現在形]聴くこと、見ること、知覚すること──音=楽=アートの現在形 畠中実/金子智太郎 2013年12月15日号:トークシリーズ:「Artwords」で読み解く現在形|美術館・アート情報 artscape

金子──今回は長年、音に関わる展示に携わってこられた畠中さんに、これまでの経緯を振りかえってお話いただく良い機会と考えています。ICC★1は2000年以降の日本のサウンド・アートを主導する施設でした。話のスタートはICCで行われた「サウンド・アート──音というメディア」展(2000)★2にしましょう。ICCアーカイブを見ると、定期的に音にまつわる展示が開催されていますが、その中でメルクマールになったのだと考えています。その経緯からお伺いできますか。


畠中──1998年に「ポスト・サンプリング音楽論」というタイトルのシンポジウムとミニ・コンサートを企画しました。企画協力には佐々木敦★3さん、クリストフ・シャルル★4さんや半野喜弘★5さん、久保田晃弘★6さんなどにも参加していただきました。そのきっかけは、当時オヴァル★7とクリストフ・シャルルによるアルバム「dok」(Thrill Jockey, 1997)がリリースされたことでした。それは、クリストフ・シャルルによるサウンドファイルをマーカス・ポップがプロセスしてつくられた作品です。まさにクリストフ・シャルルをオヴァル化したような。そういったファイルを交換しながら新しい音をつくるというコラボレーションが当時いくつかあって。そのような音のつくり方に着目し、サンプリング★8の新しい方法論と捉えて行ったイベントでした。
 ICCは1991年から、特定の場所を持たない、電話網の中やウェブでの活動をしていました。また、97年の現在の施設のオープンまでは、いろいろな場所を借りて、メディア系パフォーマンス作品の公演なども行なっていました。それで、欧米では、メディア・アート★9の分野でも、サウンドによる作品がヴィジュアルの作品と同じくらい大きな領域を占めているのに比べて、日本ではそういうことがそれほど認知されていないのではと感じていました。インタラクティブな作品でのコンピュータ・グラフィックスと連動するサウンドなどはありました。当時はアカデミックな領域での研究成果のような作品が多かったのですが、サウンドの世界、特にコンピュータ音楽は、もうアカデミズムからラップトップ・ミュージックの時代に移行していたわけで、もう少し現状に即した企画をやりたいとも思っていました。

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