Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

“このありがちな負け犬根性に呑み込まれることはなかったのである”

◇ Old Game Mesuem  アルカディア2001年9月号掲載分

 発売からかなりの期間が経過し、町田勢が「世界で自分たちが一番強いだろ」と本気で考えていたころ、ついに最大のライバルとなる名古屋のプレイヤーと対戦をする機会が訪れた。名古屋のとあるプレイヤーがショーの帰りに単身町田に乗り込み、対戦を挑む、という事件(?)が起きたのである。
 そしてこのとき、町田勢は、自分たちが想像もしなかった様々なテクニックに翻弄されることになる。
 どうやら、町田勢と名古屋勢では、攻略のアプローチがかなり異なっていたようだ。町田勢は純粋にトラックボールを回すスピードや、ドリブル時のフェイント、心理戦といった要素を重視して(楽しんで)プレイしていたという。それに対し名古屋勢は、対処法を知らなければまず防げないようなシュートパターン(※3)の開発など、テクニックや知識的な面における研究が、町田勢と比較にならないほど発展していたのである。
 さて、件の名古屋からの挑戦者との対戦、勝負自体はなんとか五分五分だったものの「世界最強を確信していた」町田勢にとって、そのショックはとてつもないものだったという。
 さらに言うと、このときは、名古屋の戦法やプレイスタイルに対して、あまりいい印象を持てなかったというのも事実だったそうだ。「今まで築き上げたものが、全部姑息な技にやられてしまったような気がして……」と、山岸氏は当時の町田勢の心境を語ってくれた。
 実際、その「名古屋ショック」の直後、町田勢の間では一時的にだが、ワールドカップの対戦が盛り下がってしまったほどだったという。自分が認めたくないスタイルが強いという現実に直面して、そのゲームがつまらなく見えてしまう……これまた対戦格闘ゲームの世界でも、よくあることだ(※4)。

■※2:意外に知られていない
 今ほど情報網が発達していなかった当時『ワールドカップ』の対戦ネットワークは、有力なハイスコア集計店同士のつながりがベースになっていたようだ。そのため、ハイスコア集計店などが近場になかったプレイヤーは、意外にこのゲームの対戦の盛り上がりを知らない場合が多い。


■※3:まず防げない
 特定の防ぎにくいシュートに対しては、対処法を知らないとそれだけで勝負が決まってしまうという。現在の対戦ゲームでも、特定のハメっぽい連携など、対処法を知らないと勝負にならない場合が稀にあるが、それと同じような状況だと考えてもらえばいいだろう。


■※4:よくあることだ
 対戦格闘ゲームでも、自分の研究不足を棚に上げ、ゲームにケチをつけてやめてしまう人っている。遊びだから、無理してがんばる必要はどこにもないんだけど、少しがんばってみればより深い楽しさが享受できることも多いわけで。まあ、町田勢はここで踏ん張ってみたわけだ。

http://extendead.web.fc2.com/iroiro/ogm/ogm200109.html