Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

【海難記】 Wrecked on the Sea - 著作権保護期間の延長問題について考える

今回の著作権保護期間の延長問題に関しては、日本文藝家協会の「知的所有権委員会委員長」であり、文化庁著作権審議会委員でもある三田誠広氏がイデオローグとしてあちこちで発言しているが、報道されたところでは、「欧米諸国などほとんどの先進国は著作権の保護期間を著作者の死後70年までとしており、日本もこうした動きに足並みを揃える必要がある」など、グローバライゼーションのお先棒担ぎのようなアホなことを言っている。


氏は「死後何年も経てから作品が評価されるという作家の夢を守って欲しい」とも発言しているようだが、作品の「評価」と著作権はなんの関係もない。このようないいかげんな発言を繰り返す人物をいつまでも「知的所有権委員会委員長」に戴く限り、私は日本文藝家協会という団体を批判し続けるつもりである。*2  *3


そもそも「著作権は子孫2世代にわたり保護されるべき」という考え方には、なんら合理性はないはず。百歩譲って遺族の生活保障を考えたとしても、その財産権が著者の「孫」に相続され、その世代が晩年を迎えるまで保護されるべきであるということを、どのようなロジックで三田氏は正当化なさるのだろう。


かつて三田氏は、「例えばサンテグジュペリは欧米では権利が続いているが、日本では勝手に翻訳が出せる。野蛮な国と見られているだろう」とも発言したことがある。倉橋由美子の遺作となった『新訳・星の王子さまISBN:4796653074だったが、それも「野蛮」な行為だと氏は本当に考えているのだろうか。倉橋由美子が生きていたら、三田氏のような人間が文藝家協会を代表していることに、いったいなんと言っただろうね。

仲俣暁生さんの「【海難記】 Wrecked on the Sea」より
http://d.hatena.ne.jp/solar/20061107#p1