Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

『闇金ウシジマくん』9巻の結末がヌルすぎる(?)件について

真鍋昌平闇金ウシジマくん』9巻 - 紙屋研究所
 http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/ushijima9.html
  ◇ 真鍋昌平闇金ウシジマくん』――呉智英の「平板さ」にもふれて - 紙屋研究所
   http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/yamikin-ushijimakun.html
    ◇ 紙屋研究所 http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/


私も、もっとヒリヒリするような結末が見たかっただけに、ちょっと残念、というか、正直拍子抜けでした。
かといって、「若い女くん」編みたいになっても微妙ですが。。。
そういえば、「若い女くん」編の最後のほうは「これ、御茶漬海苔だろ!」と、ツッコミたくなった人も多いはず。*1


それはさておき、今回の「フリーターくん」編の最後は、
かなり高度なバランス感覚による判断で、
あの結びを選んだ可能性もあるように思います。
紙屋研究所さんも上記リンクの文中でふれてますが、
たとえば、誰が読んでも一見無難なハッピーエンドに見えて、
じつは読み手の深い部分にしこりを残して、その問題についてなおも考えさせる、といったような。
でも、仮にそうだったとしても、やっぱりヌルいような気も。
とくに、ウシジマくんの動かし方、というか、使い方が。
つ〜か、いい人すぎ!


あそこまでウシジマくんがいい人になっちゃってたんで、
私は、逆に次の10巻で、ウシジマくんが宇津井を
新潟の被災地あたりのタコ部屋(ヤクザがらみ)に
送り込むという展開なんかを想像してしまいました。
宇津井に優しいウシジマくん。う〜む。


じつは、情が移って、宇津井がウサギに見えてきたとか?
宇津井の「宇」は「う」で、「うーたん」だし。
まあ、あり得ませんが。どこにもニンジンは描かれてなかったし。


話はそれましたが、紙屋研究所さんの言葉を借りれば、

だが、なおも宇津井は腰痛の不安をかかえながら介護の仕事と工場の夜勤を重ね、「低賃金」のなかを生きているという現実は変わっていないのだ。仮に宇津井の腰痛が再発したら、生活保護は腰痛という理由だけで果たして受けられるのだろうか(ちなみに息子が同居することで両親と祖母の生活保護支給は一体どうなったのだろう? そして痴呆が出ている祖母の介護費用は?)。

という状況こそ、「結論をギリギリ開いたままにして読者に渡し、考えさせ」るためにも、
最後に、もう少し厳しく描くべきだったのでは? と思ってしまいます。
実際にそういう状況に置かれている人々を動機づけるためには、どういう描き方をすればいいのか? 
と考えた場合、あの結び方がいちばん妥当な線だったのだとしても。


劇中で象徴的に使われている宇津井の靴、つまりコンバースのハイカットが最後の最後でキレイになったように、
そして、表4に使われているカットの宇津井が、更生後の容姿・身なり・雰囲気になっているように、
おそらく今回、作者である真鍋昌平さんは、描きたかったモチーフを描きたかったように描いて、
規定の回数・ページ数で、ねらい通り気持ちよく着地させることができたのかもしれません。
しかし、真鍋さんのことをとても優れた漫画家だと思い、
また、『闇金ウシジマくん』を希有な作品だと思うだけに、
読者としては、ついついより多くを望んでしまいます。

*1:……といっても、ずいぶん昔の作品しか読んでないので、
  御茶漬海苔さんの最近の作品についてはわかりませんが。