1973年、美術批評家のドリー・アシュトンは、アメリカ現代美術の歴史を振り返る中で、クレメント・グリーンバーグについて次のように述べている。
自分の選んだ芸術家たちを成功させようという彼[グリーンバーグ]の野心は途方もなく大きかった。[…]この野心のおかげで、彼はポロックが「偉大」であると宣言でき(このような宣言は、他の批評家たちには赤面せずにはできなかったであろうが)、さらに、アメリカには他の場所よりも優れた何かが生まれつつあると宣言することができた。[…]グリーンバーグが「偉大」と口にするたびごとに、新聞・雑誌は「そんなことがあってたまるか」と応えた。しかし、グリーンバーグの首尾一貫した態度と自信は無視できないものだった。[…]グリーンバーグほどの知的で明敏な人物が、アメリカ文化のこの新しい発展段階を偉大だと考えている以上、彼以外の人々が、それが真実かもしれないと思うようになるのは難しくなかったのである[割註引用者。以下同]1。
アシュトンは、グリーンバーグとともに、抽象表現主義の誕生に立ち会った美術批評家の一人である。グリーンバーグを間近でよく見知っていたアシュトンにとって 強烈に印象に残っているのは、野心と自信に満ち溢れたグリーンバーグがジャクソン・ポロックの偉大さを宣言する姿であった。