Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

Trigger and Anchor(引き金と錨)

苫米地英人スピリチュアリズム』(にんげん出版)

内容(「BOOK」データベースより)
霊は存在するのか?神秘体験とは何か?見えない世界をさぐる。脳機能学者が今、はじめて解き明かす真実のスピリチュアル。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
苫米地 英人
1959年東京都生まれ。脳機能学者・計算言語学者・計算機科学者・離散数学者・認知心理学者・分析哲学者。ドクター苫米地ワークス代表、コグニティブリサーチラボ株式会社代表取締役CEO、米国・カーネギーメロン大学博士(Ph.D.)、中国・南開大学客座教授。上智大学卒業後に三菱地所へ入社。85年からイェール大学大学院で「人工知能の父」ロジャー・シャンクに学ぶ。87年に計算機科学(コンピューターサイエンス)で知られるカーネギーメロン大学大学院へ移籍し、計算言語学の博士号を取得。在学中に世界初の音声通訳システムを開発した。帰国後は徳島大学助教授、ジャストシステム基礎研究所所長、通商産業省情報処理振興審議会専門委員などを歴任。洗脳・脱洗脳の世界的エキスパートとして知られる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

まず、江原のような者は糾弾されるべきという本書に同意する。彼らの霊視が本物であるかは簡単な実験で検証できる。口裏合わせできない環境で、お互いが答えを簡単に推論できないような問題を二人同時に霊視させればよい。このような「気密な検証」に耐えることが出来れば、インチキだという批判をすべて一発で退けることができる。気密な検証に臨まないと言うことは、領収書を公開できなかった某大臣と同じだろうと考えるのが自然だ。

しかし本書は痛烈に心霊主義スピリチュアリズム)を批判するが、特に目新しいところはない。最近では香山リカなども同様の書を書いているし、セーガンやドーキンスの説得力あふれる著書と比べれば見劣りする。それに痛烈すぎては啓蒙書としては良くない。

中盤には中沢新一批判がある。確かに中沢は過去にオウムとつながりがあり、それ自体は批判されるべきだが、さらに批判を進めるなら中沢の主張を一つ一つ取り上げ論破するべきで、単なる印象批判に陥っている。またヒトラーチベット仏教を信奉し、中沢がチベット仏教を信奉しているからと言って、中沢=ヒトラーではない(しかもヒトラーチベット仏教の影響を間接的に受けた可能性はあるが、信奉していなかった)。この手の、実質的に無関係な二者を結びつけるレッテル張りは、詭弁の代表で、このような論法は用いるべきではなかった。

また前半で心霊主義を批判しながら、後半では雲行きが怪しくなる。彼自身、ホメオスタシス同調などの、科学的に検証されていないオカルトまがいの説を唱えている。これはなかなかうまい引っかけだと思う。つまり、ある説は「誰が言っているか」ではなく、「中身に妥当性があるか」で判断されるべきなのだ。PhDを持っているからとか、他の著書で感銘を受けたからという理由で、苫米地氏の説も無批判に受け入れるのでは、心霊主義を盲信するのと変わらないのだ。読み手の情報リテラシー能力が問われる好著。
[By げるやん]

脳機能学者や認知心理学者を名乗る苫米地英人氏の著作。最近の流行である霊能タレントを批判している。数時間あれば中学生でも読破可能。

本書の議論のレベルはきわめて表面的で主観的な記述であり、江原氏らを論破したとは言い難い。他者を糾弾する場合は、他者の論の矛盾を論理的に説明するか、自身の説が正しいことを証明するかのいずれかは必須であるのに、本著者は(学者でありながら)そのルールを理解していない。例えば、江原氏の説が複数の宗教の教義を併せたものだからウソだというのは、旧来の宗教が合理的であるという前提があるという立場によるが、もともと宗教自体には多くの不合理が存在しているし、不合理な事象の部分を抜き出して併せると合理的になることもあり得るため、何の説得力もない。また、著者の説である『催眠術中の変性意識状態』なるものが科学的にどのように証明され認知されているかを先に述べないかぎり、互いに根拠も述べず『自分が正しい』と言い張る水掛け論にしかならない。『自分はすべてわかっているんですよ』という文章ばかりで、なぜそうなのかという科学的根拠など、具体的な説明は皆無に等しい。この知性レベルは『私には全て見えています』と言う江原氏と全く同じである。本書では、根拠とする理由に有名人からの伝聞を用いている部分も多いが、これはname-droppingという、著者自身の論理性に自身がない場合に用いられる姑息的な手法である。江原氏の手口は著者の言うようなものではなく、単なるコールドリーディングとホットリーディング石井裕之氏の著作を参照)を併せたものであるという認識で通っていると思うし、これはTVスタッフの告発からも整合性があると思う。他の情報も、安斎育郎氏や菊池聡氏の(安価な)著作のほうが圧倒的に厚く、そちらを読むことを推奨する。

科学者を名乗るために必須であって、第三者が公的に認める国際論文を検索しても、脳機能学や認知心理学分野に苫米地氏の名は皆無である。この事実は、本書に記載されているfMRIなどについての著者の知識のなさや議論のレベルをみると理解できる。本書のような書が出版された直後にはなぜか絶賛する書評が多数出現するが、明らかにそれらの書評は適切とは言い難い。『詭弁論理学(野崎昭弘著)』を読んでメディアリテラシーよりももっと基本的な知識を身につけるべきだ。小生は江原氏をまったく信じていないが、そのような立場から見ても本書はせいぜい星2つまでの評価で、値段分の価値はない。追記として、本著者の書に厳しいレビューは次々に消されており、誰かの指示による組織的な活動が疑われる行為が特定の著者に限ってみられることにも注意が必要だ。
[By MM]

http://www.amazon.co.jp/dp/4931344194
苫米地英人さんも毀誉褒貶ある方のようですが、
最近ちょっと気になっています。


YouTube - ディスカバリーチャンネル 苫米地英人
http://jp.youtube.com/watch?v=z30Z4iZSnJk


YouTube - 博士も知らないニッポンのウラ第36回「スピリチュアルのウラ」
http://jp.youtube.com/watch?v=A2o165FEDfM


>>>「博士も知らないニッポンのウラ」最終回のゲストは宮台真司さんと苫米地英人さん
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20081219#p14


>>>週刊『SPA!』12月23日号(扶桑社)を立ち読み
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20081217#p14