Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

飯沢耕太郎「写真家たちのステージ──「写真新世紀」と「ひとつぼ展」」より

 HIROMIX蜷川実花中野愛子に代表される、コンパクトカメラをまるで楽器を奏でるように扱い、「セルフ」とその周辺の「かわいい」イメージを拾い集めていく写真群は、九〇年代半ばに爆発的に流行し、一種の社会現象となる。たしかに、「ブーム」として上滑りにもてはやされた側面もないわけではないが、彼女たちのもろくも砕け散りそうな写真には、苛酷な高度消費社会(岡崎京子のいう「平坦な戦場」)を身体を張って生き延びようとしている者たちの、切実なリアリティが刻みつけられていた。

京都造形芸術大学編『現代写真のリアリティ』(2003年 角川書店)所収
http://www.amazon.co.jp/dp/4046515082


HIROMIX「Early Spring, Brighten of Your Mind」 - artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape

写真作品は基本的に彼女の第二作品集『光』(ロッキングオン、1997年)の延長上にある。変わっていないというのが最初の印象だったが、会場にずっといるうちにその「光」の質がまるで違うことに気づいた。以前は子どもがはしゃぐように、さまざまな物理的な光の変化に感応していただけに過ぎないが、今回の展示にあふれているのはむしろ「内在的」といえるような感触の光だ。HIROMIX祈りのようにその輝きを抱きとっている。
ここでは書ききれないが、僕はHIROMIXの仕事を、1970年代に成立する「純粋少女漫画」の系譜の正統的な後継者と位置づけている(PHP新書で刊行した『戦後民主主義と少女漫画』を参照)。「乙女ちっく漫画」風の彼女のイラストを見れば、その影響関係は明らかだろう。写真や映像の中で、キラキラ瞬いている光は、少女漫画の主人公の瞳の中で輝いているのと同じものだ。

2009/05/07(木)(飯沢耕太郎

http://artscape.jp/report/review/1205679_1735.html


>>>【コラム】Photologue - 飯沢耕太郎の写真談話 活躍する女性写真家たち - マイコミジャーナル
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20090507#p11


>>>【コラム】Photologue - 飯沢耕太郎の写真談話 (42) 写真家になるために【ポートフォリオ編】(1) - マイコミジャーナル
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20090801#p15


>>>飯沢耕太郎戦後民主主義と少女漫画』関連
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20090817#p5