Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

「再録+α」を再録(http://d.hatena.ne.jp/n-291/20081130#p10)

■再録(http://d.hatena.ne.jp/n-291/20070926#p5)(http://d.hatena.ne.jp/n-291/20060102#p3)+α
■大丈夫、あらゆる意味で誰も頼んでないから - 芸術の山

 昔から、訊いてもないのに言い訳を始める奴らがいた。今でもいる、君たちのことだ。「いや、もちろん分かっていますよ。でも、そこであえて自分がやらないと」。「確信犯」だと宣言することがなんだって言うんだ。そういう奴に限って、自分(たち)にとっての「リアル」だとか(そういうことを言う奴にとってはきっとなんだってリアルなんだし、単に想像力が足りないと宣言しているにすぎない)、既に生き残ってるし/どうせ生き残れないのに「サヴァイヴァル」だとか、そもそも土俵にすら上がっていないのに/ジャンケンならあと出しのくせに/弱い奴または手下としか戦わないくせに「ガチンコ」とか「セメント」だとかという言葉を脈絡もなく言ってみたりする。とりあえずそういうようなことを言っておけば既成事実を作っちゃえるし、安全地帯に立てると思っているのだろうね。でも、ここまで言い訳しないとモチベーションが保てない(あるいは自分的に納得がいかない)のなら、最初から無理にやらなければいい。大丈夫、あらゆる意味で誰も頼んでないし、困らないから、その時こそ自信をもってフェードアウトしてもらってかまわない。しかもその上「でも、もう戻ることができない。進むことしかできない」というのも錯覚で、期待外れで申し訳ないが、そこから先は「一寸先は闇」とか「暗闇の中への跳躍」とかそういう次元の話じゃなくて、単に「間違った」だけだから、戻るも進むもなくて、そこがゴールだ。ところが、しばしば君たちは自分の能力(無能力または根本的不足)の問題を社会とか歴史とか制度とか政治とか経済とかの問題にすりかえて、「たいへんなことが起きはじめている」と大さわぎをする。分かってると思うけど、念のため言っておくけど、何も起きてないよ(いや、「たいへん」なことは起きているけど、君に言われるまでもないし、少なくとも君が言う「たいへん」なこととは全く関係ないし、困っているのは君だけだ)。ようするに君たちは新たな差異(それは既に差異じゃないし、それを言い始めたらなんだって「差異」だ)を捏造し、五十歩百歩のプチブル的差別化を喧伝し、その喧伝のテンションを競い、その発見者として特権化され続けたいだけなのだ。もちろん喧伝は、歓迎はするはずはないが、やるのは自由だ。だけど、いいかげんうるさいんだよ。君たちは広告代理店か、すき間産業か。プレゼンもいいけど、もう少し落ち着いたらどうだ。モリー・リングウォルド主演『プリティ・イン・ピンク――恋人たちの街角』でも観て頭を冷やしたらどうだ。(藤田六郎)

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まったく更新されてないと思っていた「芸術の山」(http://d.hatena.ne.jp/n-291/20060102#p3)ですが、
藤田六郎さんによるテキストが4月にアップされていたようです。


■芸術の山

眼前に聳える芸術の山は中腹からすでに雲海に隠れていた。
起伏の激しい山肌を行くその頂への途は細く険しく果てしなく長いことだろう。
いつか雲が晴れ山がその全貌を露わにすることはあるのだろうか。
登頂路を着実に歩み始めた者がいた。その背中を見上げながら道半ばで行き倒れた者がいた。雪崩にのみ込まれた者がいた。巌の険しさに戦いて下山した者がいくら探しても登山口が見つからぬ者に山はなかったと語った。山が巨大すぎて感得すらできぬ者がいた。山頂に辿り着いてそこが別の山だったと気づく者がいた。盛り土をして小さな山を作り始めた者がいた。
我々は山小屋である。芸術の山の頂への登頂路は一本であり山小屋はその途上にある。我々は下山するための脚をもたない。芸術の山から降りることはない。登山者をいつまでも待っている。
我々は芸術の山の頂を目指す全ての者を迎え入れる。登山者の道標となると同時に体力がない者には番人として下山を説く。性根の座らぬ者に対してはクレヴァスの深淵となり覚悟を試す。志の低い者には視界を遮る濃霧となる。
山小屋を訪ねる者は幸いである。

(『芸術の山』創刊の辞より)
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◇ 「『芸術の山』第0合のための往復メール書簡 田中功起⇔奥村雄樹」予告編 - 芸術の山
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>>>田中功起、言葉にする
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20081128#p2