Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

ヴォイド・メタボリズムの可視化

YouTube - TOKYOMETABOLIZING

今回は、8月29日から11月21日までイタリア・ヴェネツィアで行われる「第12回 ヴェネツィアビエンナーレ国際建築展」に出展する日本館のコンセプト映像を作成した。日本館のコミッショナーを務める建築家の北山恒さんから依頼を受け、日本館のコンセプトになっている「Tokyo Metabolizing」をテーマに、他の大都市とはまったく違うカタチで独自の変化を遂げていく東京の街並を、真俯瞰から航空撮影された写真を使い、長い時間をかけて定点観測された映像の様に住宅や建物が次々と入れ替わり、街全体が巨大な生命体の様に新陳代謝を繰り返していく様を映像化した。


【En】
WOW have provided the concept movie for the Japanese Pavilion at the 12th International Architecture Exhibition (la Biennale di Venezia) from 29 August to 21 November in Venice, Italy.
Ko Kitayama, who is an architect and the commissioner of the Japanese pavilion, offered us to make a movie based on the concept of the Japanese Pavilion "Tokyo Metabolizing", which expresses that the city of Tokyo has expanded in a very unique way with aerial photographs of overhead views such as a fixed-point observation for a long time. In the sequences, residences and buildings appear one after another, and thus the whole city have a metabolic change like a huge living organism.

http://www.youtube.com/watch?v=LnM2-xV0M4U


YouTube - 'tokyo metabolizing' - japan pavilion at venice architecture biennale 2010
http://www.youtube.com/watch?v=nXvOvyECvLE


◇ 北山恒 塚本由晴 西沢立衛『TOKYO METABOLIZING(トウキョウ・メタボライジング)』(TOTO出版

2010年8月末から開催される第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館の公式カタログである本書は、北山恒氏と塚本由晴氏による東京の都市論と、その実践例 として北山氏、塚本氏(アトリエ・ワン)、西沢立衛氏が東京で実際につくっている戸建住宅・集合住宅を紹介します。
展覧会に2分の1の模型が展示される「ハウス&アトリエ・ワン」(アトリエ・ワン設計)や「森山邸」(西沢氏設計)などを本書では設計者自身が詳しく解説します。また本展のコミッショナーでもある北山氏は、ポジティブに解釈した東京から生み出される〈新しい建築〉によって、ゆるやかに最適化されていく東京は、21世紀にふさわしい都市モデルのひとつであることを問いかけます。そしてこうした小さな建築の更新によって変化している都市の様相こそ、かつて「メタボリズム」と呼ばれた建築のあり方をめぐる概念がTOKYOという都市レベルで実践されていると指摘します。

http://www.toto.co.jp/company/press/2010/07/08_1.htm

・序文 北山恒
・Tokyo in Theory
 21世紀初頭、東京の既成市街地のなかに見られる変容について
   北山恒
 非寛容のスパイラルから抜け出すために
  ヴォイド・メタボリズムにおける第4世代住宅
   塚本由晴
・Tokyo in Practice:Atelier Bow-Wow
 アトリエ・ワンによる第4世代の住宅
 ガエ・ハウス/スウェー・ハウス/生島文庫
 タワーまちや/ハウス&アトリエ・ワン
 塚本由晴インタヴュー
・Tokyo in Practice:Ryue Nishizawa
 森山邸 7つの新建築要素
 西沢立衛インタヴュー
・Tokyo in Practice:Koh Kitayama
 洗足の連結住棟/祐天寺の連結住棟
・結び 北山恒 

http://www.xknowledge.co.jp/book/detail/88706312
http://www.amazon.co.jp/dp/4887063121

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◇ 2007年12月 アーカイブ - roundabout journal

第2特集「住宅でつくる都市」は塚本さんの監修。巻頭の「ヴォイド・メタボリズム試論」はなかなか迫力がああります。60年代の丹下メタボリズムを「コア・メタボリズム」と再定義し、現代の東京の都市空間を「ヴォイド・メタボリズム」と対比させ、建築類型と都市形態の有機的関係(タイポ・モルフォロジー)を主張しています。

http://www.round-about.org/2007/12/


◇ 『SD 2007』 - 大龍堂

■特集2:住宅でつくる都市
〈若手建築家の、都市へのアプローチを探る〉石上純也、長谷川 豪、原田真宏・原田麻魚、平田晃久、藤本壮介藤村龍至(監修:塚本由晴

http://tairyudo.com/tukan05/tukan5163.htm


◇ JA リサーチの方法(No.71)2008:秋

Atelier Bow-Wow + T.I.T. Tsukamoto Lab.: void metabolism
アトリエ・ワン東京工業大学塚本研究室 ヴォイド・メタボリズム

http://www.japan-architect.co.jp/japanese/2maga/ja/ja0071/mainfr.html
http://www.xknowledge.co.jp/book/detail/51330810


◇ medialandscapebeyondvoidmetabolism - shoojyoa
http://d.hatena.ne.jp/sandotakuto/20080514/1210702232


◇ anatomybetweenvoidandcoremetabolism - shoojyoa
http://d.hatena.ne.jp/sandotakuto/20080515/1212877877


◇ Symposium of Phenomenal Resolution - shoojyoa
http://d.hatena.ne.jp/sandotakuto/20080629/1214731274

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◇ アジアと建築ビエンナーレを考える 五十嵐太郎東北大学教授/建築史、建築批評)2010年01月15日号 - artscape

 2009年8月、提出された企画書によって、第一次審査が行なわれた。クライン ダイサム アーキテクツのプロジェクトは、カワイイに通じる「small」を日本的なデザインのキーワードに掲げ、回転寿司の形式で紹介するというもの。一方、内藤廣ヒロシマの原爆に絡めた重厚なプランである。個人的には外国人が日本館のコミッショナーになる可能性に興味をもったが、いずれもオタクに続く、ニッポンのステレオタイプに陥ってしまう恐れから強い批判が出て、落ちることになった。その結果、八束はじめ、竹山聖、北山恒が、インタビューを行なう二次審査に進む。じつは三案ともに結成50周年ということでメタボリズムを下敷きにしており、建築の関係者が歴史的な文脈を踏まえる傾向が強いことがうかがえて興味深く思われた。ちなみに、八束と竹山は、前回のコンペにも参加している。
 インタビューは10月に実施された。八束は、コンパクトシティの潮流に対抗し、グローバリズムの時代における東京計画2010を提案したハイパー・メタボリズムといえよう(『10+1』No.50を参照)。2年前は同じテーマのリサーチのみの展示案だったが、今回は未来都市のデザインも手がけ、ファイナルのなかでもっとも濃密なプランである。前回のコンペにおいて筆者以外の提案で一番良いと思ったのが八束案だったので、そのときにものたりないと思った、デザインはしないという部分が改善されたことを評価したが、コールハースにも通じる倫理なきヴィジョンに強い反発が集まった。竹山の案は、メタボリズムの増殖をキーワードに、日本の最有力の若手建築家である藤本壮介と平田晃久のインスタレーションが絡みあう。これはもっとも美しい案だったが、実現性が疑問視され、最終的に塚本由晴西沢立衛を起用する北山案が勝利した。彼は、1960年代のモノ=図としてのホットなメタボリズムに対し、都市環境における空地に注目して、ヴォイド=地としてのクールなメタボリズムを掲げ、現代の東京論を展開する。国別参加という万博システムを踏襲するビエンナーレは、日本代表として誰を選ぶのかという場だ。そうした意味において、北山が企画した塚本+西沢のコンビは、安定性のあるプランといえよう。
 なお、コミッショナーの決定後、妹島和世ビエンナーレ全体のディレクターに選出されたというニュースが入り、奇しくもSANAAの二人がそれぞれの方法で最大の建築展に参加することになった。

http://artscape.jp/focus/1211634_1635.html

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国際交流基金 > 文化芸術交流 > 造形美術 > 国際美術展への参加 > ヴェネチア・ビエンナーレ > 建築展 > 12回 > 日本館の展示概要

東京という都市はヨーロッパの都市に見られる連続壁体で造られる都市構造ではなく、ひとつひとつ独立した建物(グレイン)の集合体として構成されている。すなわち個体の個別変容が容易に行われるようなシステムが内在しているのだ。絶え間なく生成変化する現代の東京で生まれている独特の建築を観察すると、東京は「新しい建築」、そして都市建築理論を生み出す孵化装置であることがわかる。

http://www.jpf.go.jp/venezia-biennale/arc/j/12/01.html


◇ 建築は集まって生活する根拠はつくれるか - architecture WORKSHOP

敷地の拘束を超えていくもの
現実の社会では建築を構想することは必ず敷地に拘束されている。しかし、あたりまえのことながら大学の研究課題では敷地を容易に越境することができる。数年前、大学院で『アーバンボイドプログラム』という都市研究をおこなった。それは、「日本の都市部にある木造密集市街地は、マーケットのセグメントが働きグレインはその地域の中ではほぼ同じである。敷地は小さく細分化されるのだが、建坪率が効いているために空地率は一定である。そこでは庭とは呼べないスキマのように残る空地が存在し、そんな空地にも庭木が植えられている。この一敷地一建物という制度と民法上の壁面後退によって生まれる、都市のなかのスキマや空地(アーバンボイドプログラム)を、連続する空間のネットワークであるとして見てみると、この木造密集市街地は密度がそろい庭木を抱き込んだポーラスな塊のように認識される。そのポーラスな塊に身体を入れると、その隙間から思いがけない風が流れてきたり、庭木を通して優しい陽射しが射してくるような心地好い空間がある。それは湿度が高く温暖なモンスーン地帯に対応した空間形式であるのかも知れない。 このアーバンボイドプログラムでは、計画する実体としてのポジティブスペースではない、その対称にあるネガティブスペース(実体の建物を主体としてみたときに取り残される空間)に注目することで、分断されている住戸を編み込むような新しい空間組成が創造できる。」というものである。


共同体を要請する空間
昨年、2006年の1年間、新建築誌の月評を担当していた。それは年間を通して、発表される建築をすべて克明に読んでいくという作業である。この一連の建築をアーバンボイドプログラムという概念で読み返してみると、同じ思想によって建築概念が提出されているものがあることに気づく。「ハウス&アトリエ・ワン」は小さな建築であるがとても重要なメッセージが込められている。都市に存在する様々なネガティブ・スペースを積極的に評価して、それと実空間を同一化し、そこから全く新しい空間(第三空間)として立ち上げようと意図されていることがわかる。隣地に向けて大きく開いた開口はスキマのように存在する残余空間を通して、隣家の外壁までを自らの領域に取り込んでいる。と、同時に、そのスキマの存在によって隣家との関係は抜き差しならないものに持ち込まれている。ここでは都市のなかの残余のスペースに、それまでとは異なる意味が与えられているようである。そして「森山邸」はさらに明快な戦略をもって敷地の概念を解体している。 計画する建築そのものに、多様な空隙のような外部空間を抱き込むことで、周囲の街のなかに存在する微細な外部空間と連続し、その環境の中に同一化している。ここでは実空間とその実空間によって切り取られた残余空間が等価に扱われているようにみえるのだが、さらには主体がこの残余空間であり、まるで実空間は残余空間のためにあるようにみることもできる。そして、この空隙のネットワークによって諸室は濃密に関係させられ、集合して住むというプログラムを強化していることがわかる。ここでは新しい建築の規範が生み出されているのだ。


このふたつの建築は敷地の拘束を解除する方策を、概念(他の敷地を侵犯せずに)として指し示していた。ともに生活に関係するプログラムであることに注意する必要がある。そして、「洗足の連結住棟」は、通常の計画手法では大きなボリュームとなる一棟建築を解体して分割すること、その分割によって生まれる残余空間をもうひとつの主要な計画対象と考えたものである。このネガティブ・スペースによって住戸間相互の関係をつけるのだが、それは互いの生活の気配を否応なく感じるものであり、そのため相互の心遣いと配慮が要求されるというものである。

http://www.archws.com/profile/publications/028.html
北山恒さんのウェブサイトより。
初出は『新建築』2007年8月号。