Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

河本信治「デュシャンという物語の始まり」@ 森美術館 - ART iT アートイット

マルセル・デュシャンについて詳しい人はいくらでもいます。正直、私の知識は半端だと思います。ただ、京都国立近代美術館が1987年に13点のレディメイド(1964年シュヴァルツ版)を収蔵してから20年以上の期間、デュシャンの作品を説明することは私が避けることの出来ない仕事のひとつでした。その過程で気付いたのは、デュシャンとその作品はその語り方、【どのように語るか】ということが重要なのだということでした。「デュシャンを語るということは、なにがしかのゲームに参加することなのだ」と自分で納得し、ようやく、デュシャンについて少し語れるかもしれないと思えたのが10年ほど前のことです。最初に、「本日の講演で私がデュシャンについて語ることは嘘です」と宣言することから始めたいと思います。「この黒板に書いてある言葉は嘘です」という設定なしでは、私にはデュシャンを語れないような気がするのです。本日はできるだけ正確な事実と作品情報を基に、かつその解読については個人的で恣意的にお話ししますが、その解釈の正当性については責任を持たないということをご了解下さい。

http://www.art-it.asia/u/admin_lec/seUiBftqE1R53Jzp0NyT/?lang=ja