Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

再録(http://d.hatena.ne.jp/n-291/20070128#p1 http://d.hatena.ne.jp/n-291/20070128#p2)

■歯磨きのペーストはチューブの中で■■■■■固まった
あるとき彼は「■■■■■」に入る言葉を探すのをやめた。
それは放棄ではなく選択だった。
そこにあるのは「固まった」という事実だけだった。
ニュアンスはセンテンスの布置にゆだねれば十分だった。
彼は「■■■■■」に言葉を当て嵌めるのをやめた。
それを表現だと考えるのをやめた。

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■「歯磨きのペースト」は、
「静かに」も「つめたく」も「冷ややかに」も「氷のように」も「大理石のように」も
「プラスティックのように」も「ゴムのように」も「寒天のように」も「柔らかく」も
「あいまいに」も「夢みるように」も「美しく」も「醜く」も「人知れず」も「永遠に」も
「孤独に」も「化石のように」も「白磁のように」も「白蛇の眠りのように」も
「女の踵のように」も「雨上がりの石榴のように」も「自らの重みに撓うように」も
「固ま」らなか「った」。