Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

先見日記 Insight Diaries 2006 Jun 26 いとうせいこう - NTTデータ

 特に後者が僕には興味深かった。園芸を農業と差別化し、フーリエを引用しながらそれを「魅力的労働」と定義づける表題原稿の執筆者ピーター・ランボーン・ウィルソンは、現在唯一可能な「アヴァンギャルドavant garde」は「前衛的庭園avant garden」だとする。
 自給自足によって資本の循環に対抗し、ハーブを育てることで医療から自由になり、占拠(スクワット)した土地をガーデニングで変容させ、いまや園芸はひとつの社会的な行為となるのだ。
 まるでロマンティックなサイバーパンクSFのようだけれど、筆者はそれをきわめて実践的な社会運動の宣言として書く。そして、『VOL』ではその論旨を“園芸戦線”としてネットワーク化する形で、高祖岩三郎の「庭=運動(アヴァン・ガーデニング)以後」やビル・ワインバーグ「VIVA ロイサイダ・リブレ」といった“NYロウワー・イーストサイドの不法占拠(スクワット)&ガーデニング運動”を支持する戦闘的なエッセイを連打する。しまいにはスクワット組織「太陽の家」のリーダー、ラファエル・ブエノへのインタビューも敢行される勢いだ。

 シケた批評しか見かけないこの御時世、『VOL』は意外なところから社会を撃ってくる。しかも、アヴァン・ガーデニングという言葉で、もうひとつのNY論を構成しているあたり、一筋縄ではいかない。

http://www.nttdata.com/jp/ja/diary/diary2006/06/20060626.html