Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

hakim bey - t.a.z. the temporary autonomous zone, ontological anarchy, poetic terrorism / japanese translation / contents

http://www.netarts.org/taz_web/contents.html
10年以上ぶりにこのページを見た。と思ったら、震災後の数年前にも見ていたこと(を忘却していたこと)に気づく。


◇ 隙間とクモの巣――ハキム・ベイ『TAZ』を読む―― - 栗原幸夫のホームページ

 ネットワークは支配の現代的な形態である。リゾーム(根茎)もまた時に構造をもった権力であり得る。だから、中央集権的な権力に対置されたネットワークが、それだけでプラスに評価される理由はまったくない。支配層の方がはるかによくネットワークを形成し、有効に運用していることは、インターネットという現在もっとも注目されているネットワークの歴史をみれば明らかだ。
 いまでは周知のことなので指摘するだけにとどめるが、インターネットの基本的なコンセプトは、ランド・コーポレーションのポール・バランによって、全面的な核戦争による通信設備への攻撃から通信機能を防護するための、システムの分散化を可能にする軍事技術として提案され、実行されたのである。もちろんその反面で、基本的なハードやソフトの開発に際して、六〇年代カウンターカルチャーのなかで育った世代の脱構築的な思想や行動が、今日のインターネットを生み出すもう一つの原動力であったことをも指摘しないと公平を欠くだろう。しかしすくなくともここから分かってくるのは、その構想・技術開発・実現の基本的な過程、つまりインターネットのインフラ・ストラクチャーの基本的な部分は、国家と資本によって、その必要に即応して形成されているということだ。
 しかしそれでは、インターネットは全くの国家と資本の道具でしかないかといえば、そうではない。支配のネットワークはしばしばその拡大・強化の過程でその内部に、本来の意図を越えた、機能転換を生み出す。この機能転換をおこした部分が、ネットワークの「隙間」だ。ハキム・ベイのTAZ(The Temporary Autonomous Zone=一時的自律ゾーン)を、私流に言い換えれば、それはこのような「隙間」なのである。もちろん「隙間」はサイバースペースのなかにかぎらない。現実世界のなかにも生まれる。いや、率直に言えば、現実世界のなかの「隙間」こそが問題なのである。
 ハキム・ベイは歴史上にかつて存在したTAZの例として、海賊の根拠地としての大洋の孤島や空想的社会主義者のユートピア、さらにダンヌンツィオのフィウーメ共和国、さらにミュンヒエン・レーテまでも考察の対象にするが、しかしこのようなenclave(包領・飛び地)が、そうやすやすと存在できるわけではない。「われわれは未知の世界terra incogunita、すなわちフロンティアの残されていない初めての世紀に生きている」のだから。そのような時代のTAZについて、ハキム・ベイがどのような考えをもっているかは、つぎの引用によってあきらかだろう。

「TAZを開始することは、暴力を振るったり身を護ったりする戦術を伴うかも知れないが、しかしその偉大な強みは、それが目に見えないことにあるのだ――国家は、TAZが歴史的に定義不能であるが故に、それを理解することができない。TAZは名付けられる(出現する、あるいは介在する)やいなや、消滅せねばならないし、そのとおり消え失せるだろう。その後に残されるのは、どこか他のところで蜂起するための空っぽの外皮であって、スペクタクルという言葉では定義できないが故に、再び不可視なものとなるのである。TAZはそれゆえ、国家が遍在し、全能で、しかし同時にひび割れと空虚だらけの時代と対決するにあたっての、完璧な戦術なのだ。」(「革命を待ち受けること」)

 では、ウェブはこのTAZとどうかかわるのか。

「ウェブが進化しつつあるこの瞬間に、われわれの『他者と向き合って』肉体的に触れ合いたいという欲求を考える時、われわれは第一義的にはウェブというものを、状況がそれを求めた時には、一つのTAZからもう一つのTAZへと情報を伝達可能とする、TAZを防衛することができる、TAZを『見えなく』させるかあるいはそれに歯を与えることが可能な、支援のシステムと見なさなければならない。しかしそれだけではない。もしTAZが遊牧民の野営地であるなら、ウェブは、その部族が彼らの叙事詩、歌、系譜、そして伝説を作り出す手助けをするし、彼らに部族経済の流通経路を作り上げる秘密の隊商のルートを教え、急襲の手引きをする。そしてさらに、彼らがまさに辿らねばならない道筋のいくつかを、そして彼らがお告げや予兆として経験しなければならない夢のいくつかを含んでいるのだ。」そのうえで、彼は重要な指摘をする。「ウェブはその存在を、どんなコンピュータ・テクノロジーにも依存してはいない。」そしてさらに言う。「TAZはまず第一に、メディアによる媒介を避けようとするが、それはその存在を媒介されないものとして経験したいがためである。」「しかし、しかし、ウェブのまさにその本質は、媒介することに他ならないのだ。」(「ネットとウェブ」)

 テクノロジーと反テクノロジー、あるいは直接性と媒介性に引き裂かれたところにTAZは存在している。と言っても、べつに悲観する必要はない。ここでは、ウェブという「媒介」は直接性を形成する媒介なのだから。ネットワークという支配に対抗するためには、テクノロジーと反テクノロジー、あるいは直接性と媒介性という二項対立を、理念的にではなく、現実世界の方に向かって乗り越えなければならない。その乗り越えの契機は、おそらく距離を無化する速度を大衆が手にしたという現実である。われわれに必要なのは、けっして国際資本や国家連合が支配のテクノロジーとしてもっている速度を「遅延化」することではないし、ましてその種の「速度」を獲得することではない。関係性の距離を無限に縮めることによって、速度を無化するような速度を獲得することだ。

http://www.shonan.ne.jp/~kuri/hyouron_4/hakimbey.html


◇ 1117夜『T.A.Z.』ハキム・ベイ|松岡正剛の千夜千冊

 本書をいま読みかえすと、正直にいえば、カオス論や量子パラダイムフラクタルな認識を用いたオントロジカル・アナーキーな11のコミュニケは、もはや瑞々しいメタファーには満ちていないとも感じられる。ラディカル・タオイズムやルートレス・コスモポリタンの掛け声も、内容が伴ってはいない。
 けれども、いくつかのメッセージのなかには、今日なお決定的な方法の思想の提示が生きている。最も訴求力をもっているのは、やはり「一時的自律性」という考え方だろう。すでに第1063夜のオートポイエーシスについての議論や第1029夜のアントニオ・ネグリのアウトノミアの議論でも言及しておいたのだが、自律性(オートノミー)はそのシステムとして普遍性をもっている。しかし、その自律性をどのように発揮するのかといえば、生命体ですらその発揮は生と死のあいだに発揮されるのだから、これを社会的に動かそうとすれば、やはり一時的な集約が必要になる。

http://1000ya.isis.ne.jp/1117.html


◇ ピーター・ランボーン・ウィルソン - Wikipedia

ピーター・ランボーン・ウィルソン(Peter Lamborn Wilson、1945年- )はアメリカ合衆国アナキズムの著述家、評論家、詩人である。ハキム・ベイの筆名で一時的自律ゾーン(英語版) (TAZ) の概念を最初に提起した人物として知られる。

ピーター・ランボーン・ウィルソンはイスラム革命の間、イランを離れた。1980年代、かれの思想はある種のゲノン的伝統主義(英語版)から、アナキズムシチュアシオニストの思想に、異端的スーフィズムとネオペイガニズムとを複合させたものへと発展し、その思想は「アナキスト存在論」または「イミディアティズム」〔瞬間直接主義〕という言葉で表現された。過去にはニューヨークのブルックリンで非営利出版プロジェクト、アウトノメディア(英語版)〔オートノミディア〕の編集に携わったこともあった。
アナキズムと一時的自律ゾーンについての著作に加え、堂(英語版)の伝統、ユートピア主義者シャルル・フーリエファシストのガブリエーレ・ダヌンツィオ、スーフィズムと古代ケルト文化の眉唾な関係、テクノロジーとラッダイト運動、古代アイルランドにおけるベニテングタケの使用、スーフィーの伝統における神聖少年愛(英語版)[3]といったさまざまなトピックについて書いている。また、稚児愛について北アメリ少年愛協会の会報に寄稿してもいる[4]。
ハキム・ベイの詩的テクストと詩は『P.A.N.』、『パンソロジー』1・2・3、『ガニメデ』、『優雅な屍体』、「アコライト・リーダー」シリーズのペーパーバックに掲載されている。「サンドバーグ」シリーズを含むこれらの詩の多くは『ドッグスター』 DogStar (未完)にまとめられている。現在、かれの文章は『フィフス・エステイト(英語版)』誌やニューヨークを基盤とする『First of the Month』といった出版物で定期的に目にすることができる。
かれはまた、少なくとも1冊の小説 - 『カマール年代記 ― 鴉石』 The Chronicles of Qamar: Crowstone - を発表している[5]。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%82%BD%E3%83%B3