Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

「私たちが言葉を読むのには程度の差が

あります。テクストに大きな価値をみとめない場合、私たちはいくつかの
段落を飛ばすことがよくある。展開がじつに凡庸なので、先がどうなるか
わかってしまうことがある。私たちはページ上で自分の道筋を選択してい
ます。指標から指標へと駆け抜けていきます。精読しようとするときでさ
え、私たちの注意力にはさまざまな揺らぎがあり、そのため、たとえばこ
れまですでに二十回も読んだことのあるテクストについて講義を準備して
いるときに、新しいことを発見したりする。しっかり読んであったのに忘
れてしまったものもある。しかしまた、それまではまったく注意を払わな
かったものもあるのです。そして、これまで注意していなかったものの重
要性を改めて私たちに示してくれるものこそ、私たち自身の批判的な思考、
私たちの読書、私たちのエクリチュールの進展にほかならないのです。 」
ミシェル・ビュトール『即興演奏』 第十二章・五二「読解可能性」より
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