Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

マル激トーク・オン・ディマンド 第412回(2009年02月28日)「なぜ私はグローバル資本主義の罠に気づかなかったのか」

ゲスト:中谷巌氏(多摩大学教授・ルネッサンスセンター長)
司会:神保哲夫(ビデオジャーナリスト) 宮台真司社会学者)

 しかし、中谷氏は次第に、改革の負の側面に気づき始める。レーガン政権以降、新自由主義的な政策を推し進めてきたアメリカでは、かつて中谷氏が羨望の眼差しで眺めていた豊かな中間層は消滅し、貧富の差が広がっていった。そして、同様に改革を進めた日本でも非正規労働者が全労働者の3割を超えるなど格差が広がり、かつて一億総中流と呼ばれた社会から安心や安全が失われていった。やがて中谷氏は、市場原理に委ねればすべての問題が解決するという経済学の理論を実際の社会に適用しても、人々は決して幸せになれないことに気がつく。
 そもそも氏が体験した豊かなアメリカは、自由な経済活動によって作られたものではなく、むしろ政府による長年の社会福祉政策や所得再分配政策の生んだ結果だった。にもかかわらず、なぜか中谷氏を含む多くのアメリカ留学経験者はそれを誤解し、新自由主義や市場原理至上主義の信奉者となっていた。
 今日、中谷氏は、豊かなアメリカを蝕み、日本固有の豊かな社会基盤も奪いつつあるグローバル資本主義という「モンスター」を、何とか阻止しなければならないと主張している。そして、そのために、霞ヶ関の中央官僚の数を3分の1に縮小する「霞ヶ関3分の1プロジェクト」の必要性などを訴えている。
 なぜ日本のエリートの多くが、アメリカの豊かさの源泉を誤解し、市場原理主義者となってしまうのか、誤解に基づくものとはいえ、中途半端に改革を推し進めてしまった日本はこれからどうすればいいのか、そして、われわれはこの先グローバル資本主義というモンスターとどう付き合っていけばいいのかなどを、中谷氏とともに議論した。

今週のニュース・コメンタリー
総務省が放送局と制作会社の取引ガイドラインを策定
オバマ増税が市民セクターへ意外な影響
・「おくりびとアカデミー賞受賞の背景

http://www.videonews.com/on-demand/0411/000850.php
http://www.videonews.com/
「NEWS」に、パルコ=糸井重里さん的な広告手法の分析(ニクラス・ルーマンによる)についての言及あり。
おいしい生活」的意味不明コマーシャル→費用対効果は不明瞭→高度消費社会のコスモロジーを形成するための力→
漠然とした「豊かさ」を「これでいいのだ」と自己肯定→そうした自己肯定のための意味論を支えるためのある種の「公共的なふるまい」→
「機能から記号へ」という時代を支えるためのイデオロギー機能を担っていた。


>>>清水穣『白と黒で──写真と……』(現代思潮新社)より その1
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20080521#p3


>>>マル激トーク・オン・ディマンド 第411回(2009年02月21日)「脳ブームは危険がいっぱい」
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20090223#p8
前回の放送。


※過去の「マル激」関連
http://d.hatena.ne.jp/n-291/searchdiary?word=%a5%de%a5%eb%b7%e3


http://www.youtube.com/results?search_type=&search_query=%E3%83%9E%E3%83%AB%E6%BF%80