Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

記者会見クローズの主犯と鳩山さんとリバイアサンの関係 - http://www.jimbo.tv/

 記者クラブ問題について、昨日ぼくがガバナンスの問題かもしれないと書いたのは、2つの可能性を想定してのことでした。

 まず一つ目は、鳩山さんがオープンにしたいと言っているのに、官邸官僚が言うことを聞かずに、勝手に記者会見をクローズにした可能性はなかったのかというもの。これは、民主党が、ディスクロージャー政策の一丁目一番地だった記者会見のオープン方針を転換したというよりも、民主党政権が官邸官僚の行動を掌握できてていないために、自分たちの意向通りの政策が実行されないという問題ということになります。要するに政権が自らのお膝元の官邸のガバナンス(統制)を握れていないことになり、これはこれで大きな問題です。なぜって、野党時代はあたり前にやってきた会見のオープン化という単純な方針においてさえガバナンスを発揮でないのであれば、他の大きな「革命的改革」なんてできっこないじゃないですか。

 しかし、ガバナンス問題にはもう一つの可能性がありました。それは、官邸トップの鳩山さんの意向に反する形で政府の施策が実行されているという意味では、現象としては同じことになりますが、官僚が独走暴走しているのではなく、もっと別のところに問題の震源地があった可能性です。具体的には、鳩山さんのすぐ下で総理の意向を上意下達し、それを実現するために官僚との間に入って調整を行う立場にある平野官房長官が、鳩山さんの意向通りに動いていない可能性です。

 これは井上記者が指摘するような官僚の独善的な暴走とはやや性格が異なりますが、トップの意向がねじ曲げられて実行されているという意味では、これもまた一種のガバナンス問題だと言えます。

 両者の間を行ったり来たりしてようやく見えてきたことは、まず官邸の報道室に「雑誌と外プレだけでいい」という党の意向を伝えてきたのは、平野次期官房長官だったということです。これは官邸の報道室で確認済みです。しかし民主党はその事実を正確に把握しておらず、党の担当者にあれこれ突っ込むと、「平野氏からは、官邸にはオープンにするよう伝えたと聞いている」という、伝聞調レベルの確認しかとれていないことがわかりました。

 実際は正確な事実関係が確認できているわけではないのに、メディアからの問い合わせに対して民主党が「官邸にはオープンにするようお願いしてある」などと説明をするものだから、官邸報道室主犯説が出回ってしまったようです。要するに、官邸の報道室にオープンにしなくていいと平野次期官房長官(当時民主党役員室長)が指示をしていることを、党側で正確に把握できていなかったか、もしくは平野氏が党側に本当のことを伝えていなかったかのいずれかが、一連の混乱の原因だったということになります。

 官邸報道室主犯説と、平野官房長官(当時は民主党役員室長)主犯説の2つの犯人説が乱れ飛び、「早くも官僚にしてやられた民主党」なんて話が出始めていましたが、今回の会見のオープン化問題に関する限り、どうも事実はそういうことではなく、あくまで次期官房長官による政治主導の決定の結果だったということのようです。

 それにそもそも主要メディアでは、この話は一行たりとも記事にしていないわけですから、記者クラブの加盟社の記者しか参加してない記者会見でこの問題が追及されることも、まずあり得ないでしょう。何十年もの間、官邸の記者会見を開放してこなかった自民党に、この「公約違反」を国会で追及してもらうことを期待するのも、ちょっと無理がありますよね。

 それに、そもそも平野官房長官献金問題などの火種を抱える鳩山さんの脇を固める「トラブルシューター役」を期待されて総理の女房役に就いた方です。平野氏と鳩山総理の間で「メディア対応については私にまかせてくださいよ」という話になっていたとしても、それほど不思議なことではありません。


◆本当の黒幕が誰かは気にしておきましょうね◆
 私が一番気にしていることは、これまで記者クラブ問題というのは、メディアの既得権益という文脈だけで捉えられてきましたが、メディアがいよいよ観念して記者クラブ開放やむなしの方向に舵を切った時、実は記者クラブ制度における黒幕というか、本当のリバイアサンが顔を出してきたのではないかということなんです。つまり、記者クラブ制度というのは、一見メディアの既得権益問題に見えますが、実はそれは副次的な産物に過ぎず、この制度で一番得をしているのは実は統治権力に他ならないということです。

 統治権力にとっては、記者クラブなどという餌を与えてメディアを飼い慣らしておけば、こんなに楽な話はありません。特権を与えてもらっているメディアは、決して自分たちに真剣には刃向かってこないだろうし、しかも記者クラブという部屋で御用記事ばかりを書いて虚勢された記者たちは、もはや統治権力をチェックする気概も能力も持っていない。しかも、記者クラブ問題では、批判されるとすればメディアだけが批判され、なぜか第一義的な受益者であるはずの黒幕である統治権力は、ほとんど批判の対象にならない。

 今回は震源地の特定までは白黒はっきりつけることができましたが、そこから先の最後の本丸が特定できないのが、申し訳ありませんが今の私の限界です。鳩山総理や平野官房長官に直接記者会見でこの問題を質せれば簡単に解決することですが、まだ会見には出られないので、今すぐにそれは叶いません。そもそもそんな質問ができる人が会見に入れていれば今回の問題もなかったわけで、例の「カギのかかった箱の中に入ったカギ」問題の解決は簡単ではないわけです。

 いずれ総理会見や官房長官の会見に出られるようになったら、それも聞いてみることにします。

http://www.jimbo.tv/commentary/000585.php
神保哲生さんのブログより。
とにかく全文読むことをオススメします。


◇ さらに追加します - MIYADAI.com Blog

僕のエントリについて(13)が言及して下さっています。

(13)
ニュースな待合室
民主党の裏切り、それは転落への道
http://informatics.cocolog-nifty.com/news/2009/09/post-a62a.html


【番外】
平野博文官房長官の公式ホームページ
市民ご意見箱
https://www.hhirano.jp/opinion/

http://www.miyadai.com/index.php?itemid=782
宮台真司さんのブログより。


>>>民主党の公約破り
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20090917#p2


>>>大手メディアが決して報じない、 「メディア改革」という重要政策の中身 | 民主党政権が実現すると、何がどう変わるか? 神保哲生 - ダイヤモンド・オンライン
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20090902#p3


>>>「任せる政治から引き受ける政治へ」。「小さな国家・小さな社会」でなく「小さな国家・大きな社会」へ - MIYADAI.com Blog
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20090727#p2