河野哲也著『暴走する脳科学』(光文社新書)刊行記念トークセッション ―脳科学は我々を幸せにするか?―
相変わらずの「脳科学ブーム」である。テレビや書籍、雑誌などで「脳」という字を見ない日はない。
しかし、巷にあふれているのは、実のところ、当たり障りのない脳科学者による社会評論だったり、実証的な証拠のない、毒にも薬にもならない「脳トレ」だったり、脳科学の皮をかぶっているが、本当は従来の心理学に基づいた教育論だったりする。
そもそも人間の能力を「脳」のみに還元できるのか? 気鋭の哲学者が、脳科学の置かれた現状と限界、「脳ブーム」の背景をわかりやすく軽妙に語る。
【プロフィール】
河野哲也(こうのてつや):一九六三年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(哲学)。現在、立教大学文学部教育学科教授。専攻は哲学・倫理学。著書に『エコロジカルな心の哲学』『環境に拡がる心』(ともに勁草書房)、『メルロ=ポンティの意味論』(創文社)、『〈心〉はからだの外にある』(NHKブックス)、『善悪は実在するか』(講談社選書メチエ)、『暴走する脳科学』(光文社新書)などがある。
日時 2月21日(日) 16:00〜18:00(予定)/開場15:30
会場 紀伊國屋書店新宿本店 9階特設会場
定員 30名(お申し込み先着順。定員になり次第受付終了)
入場料:500円(前払い不可。当日会場にて、現金にて承ります。)
整理券などは発行しません。事前お申し込みの上、会場まで直接お越しください。
お申し込み先 紀伊國屋書店新宿本店5階人文書カウンター
代表|03-3354-0131(10:00〜21:00)
http://d.hatena.ne.jp/NEAT/20100221
◇ YouTube - 暴走する脳科学ー河野哲也教授
http://www.youtube.com/watch?v=73AkJ0E-0TU
>>>マル激トーク・オン・ディマンド 第411回(2009年02月21日)「脳ブームは危険がいっぱい」
ゲスト:河野哲也氏(立教大学文学部教授)
司会:武田徹(ジャーナリスト) 宮台真司(社会学者)『「脳にいいこと」だけをやりなさい!』、『脳が冴える15の習慣―記憶・集中・思考力』、『脳を活かす勉強法』、『30日で夢をかなえる脳自分を変えるなんて簡単だ』、『脳を鍛える大人のDSトレーニング』、『脳内エステ IQサプリDS』等々、脳をテーマにした書籍やゲームが氾濫し、ちょっとした脳ブームの様相を呈しているようだ。脳については、1990年代半ばに『脳内革命』がベストセラーになるなど、これまでも何度か脳がブームになることがあったが、ここに来てわれわれの脳への関心が、新たな次元に入っているかのように見える。
1990年代、アメリカの連邦議会による「脳の10年」プロジェクトの推進などによって脳科学の研究が進み、人類の脳に対する知見は大きく進んでいる。たとえば、fMRI(機能的核磁気共鳴画像法)の開発でどのような時に脳のどの場所がどう働くかを、脳内の血液が流れる速度を画像にして調べることが可能になった。そうした技術が医療分野でうつ病などの治療に活用されるなど、確かに脳科学の発展自体は利点も多い。
しかし、人間の行動の原因をすべて脳に求める風潮について、哲学者で『暴走する脳科学』の著者河野哲也立教大学教授は、行き過ぎの感があると警鐘を鳴らす。
河野氏は、そもそも脳科学が当たり前のように主張している脳の様々な機能についての言説は、実際には科学的根拠に乏しいものが多いと言う。現にOECD は科学的根拠に乏しい脳に関する言説を「神経神話」として、報告書にまとめているが、「人間は脳の10%しか使っていない」、「人間には左脳タイプと右脳タイプがある」、「男と女は異なった脳を持つ」といった、脳に関する「諸説」の多くは、科学的な裏付けがないものが多い。庶民レベルでのいいかげんな言説はご愛敬だとしても、最近はブームに便乗して権威ある学者までが科学的根拠が弱い諸説を流布するようになっているため、やがてそれが教育や司法(犯罪捜査など)に応用されるようになることを、河野氏は懸念する。http://www.videonews.com/on-demand/0411/000847.php
http://www.videonews.com/
「PART1」の序盤に、ドクター茂木健一郎についての言及あり。
ただし、かなりマイルドかつ慎重な言い回しでの批判でした。
むしろ、編集者や出版社に責任があるというふうな発言もあり。
その場では「それはまた後で」ということになったものの、
その後「PART1」「PART2」通して直接の批判はありませんでした。
あと、養老孟司『唯脳論』に対する大森荘蔵さんの「無脳論」の話題なども。。。
◇ ビデオニューズ・ドットコムでの武田徹氏・宮台真司氏との対談 - 河野哲也 (こうの てつや)の哲学・倫理学研究室
内容的には拙著『暴走する脳科学』(光文社)を踏まえたもので、趣旨としては、脳科学全体を否定するのではなく、科学的な事実や仮説を超えた、少し考えれば素人でもおかしいと思えるような過剰な一般化や性急な応用に警鐘をならしたものです。こうした慎重な態度が、脳科学の善き発展と社会貢献に必要だろうと思います。
すでに否定された仮説や覆されたデータが独り歩きしてしまう「神経神話」、たとえば、「脳の成長は三歳まで」「右脳人間と左脳人間がいる」「人間は脳の10%しか使っていない」などの現在は支持されていない「神話」を紹介しました。これらは、脳科学者・学会の間ではすでに退けられていても、一般的な言説の中では、一定の影響をもってしまっています。
また、教育や司法、政治や社会問題などを、環境要因や来歴などを無視して、脳状態だけで語ることには一定の危険が伴います。また、何のためかを問わない能力増強(エンハンスメント)にも、人間の幸福につながらないテクノロジーとなってしまう可能性を指摘しました。http://tetsuyakono.typepad.jp/blog/2009/02/post-e778.html
◇ 河野哲也『暴走する脳科学』(光文社新書)
http://www.amazon.co.jp/dp/4334034802
◇ 大森荘蔵『時間と存在』(青土社)
http://www.amazon.co.jp/dp/4791753054
◇ 廣松渉『身心問題 第3版』(青土社)
http://www.amazon.co.jp/dp/479176417X
※過去の「マル激」関連
http://d.hatena.ne.jp/n-291/searchdiary?word=%a5%de%a5%eb%b7%e3
※http://www.youtube.com/results?search_type=&search_query=%E3%83%9E%E3%83%AB%E6%BF%80
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20090223#p8
>>>[くおりあ]ドクター茂木 関連
◇ とうとうマスコミでも批判が - Procrastinator's column
ただ、この記事で弱いのは、「茂木氏は科学者ではない」といっているのが“物理学者”の大槻名誉教授ということだろう。これが、理研のA先生とかI先生、あるいは日立のK先生のコメントだったら、それこそ大ダメージだったろう。
それでも、まあ、ほとんどの神経科学者で、茂木さんを一流研究者と思っている人はいないんじゃないかと思う。その認識は、よく言えば神経科学の“伝道者 (evangelist) ”、悪く言えば“電波芸者”といったところだろう。
SfN(北米神経科学会)の学会会場でも見かけたけど、いつも床に座ってマックで何か書いているか読んでいるかだった。内外に認められている存在であれば、もっとも規模の大きい世界中から研究者が集まる学会なのだから、ポスター発表者やその他の研究者と熱心に議論していたりする姿が見られてもおかしくないはずなのだが・・・。
また、彼の語る「脳科学的には−」の知見のうち、彼が実験したもの研究したものはほとんどないというのも問題があるように思う。論文自体、彼がfirst author(論文で表記される著者名で、もっとも最初に書かれている人のこと。その論文の実質的な代表者・責任者であるとみなされる)であるものがないし、彼がどういう実験をして、どういうことを明らかにしたのか、見たことも読んだこともない。
http://blog.livedoor.jp/weidows95/archives/52276396.html
◇ 茂木健一郎 - liber studiorum
http://a-gemini.cocolog-nifty.com/blog/cat14888603/index.html