Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

細江英公、森永純トークショー「表現の行き先」 - 東京芸術史 〜作家インタビュー、現代アート情報

これらのやりとりを聞きながら、僕は、写真と文学との親和性の高さに気付かされた。いや、写真と文学の親和性が高いことなんて予め分かりきっていたのだけれど、あらためて、強烈に、そう、感じたのだ。小説を読んで感動するのと同じ情動でもって、写真を前に僕らはむせび泣きうるのだ、と。

ここであえて話を迂回させるが、アートフェア東京のエグゼクティブディレクターである辛美沙氏の著書『アート・インダストリー』の中で、インタビューを受けたキュレーターのハンス・ウルリッヒ・オブリストがこう言っている。

アートと建築、デザインはほとんどボーダーレスになってきましたね。(略)映画からもアート界に入っています。(略)アート界は巨大なコンタクトゾーンとなっています。(略)その代わりに十分に入って来ていない唯一のものが文学です。(略)アート、建築およびデザインは融合し始めていますが、詩と文学は、そこから少し外れてしまっているのです。(p79)

そう、いわゆるコンテンポラリーアートと文学との親和性は低い。

また、写真を使ったコンテンポラリーアートとして澤田知子シンディ・シャーマン杉本博司など無数に挙げられるが、彼ら彼女らも別に文学的に語られているわけではない(杉本氏は自分で文学的に語っているが)。問題は、作家の思考や狙いがいかに的確にビジュアライズされているか否か、であり、あるいは、またそのビジュアルが見る者の頭の中で再コンセプチュアライズされうるか、である。よって、写真という技法自体は決して一義的ではなく、ビジュアライズの方法として有効だったから用いられているのだと言える。


実際、鑑賞者である僕らも、彼らの写真を前に情動的にものを語ろうとは思わない。それらのアートが優れてアートであるゆえんは、観賞することで僕らの認識が新たに切り開かれるからであり、共感、あるいは感動するからでは決してないのだ。

ここで、フォトアートと文学の親和性は高いが、コンテンポラリーアートと文学の親和性は低い、などと結論づけるつもりはさらさらない(長々と読ませておいて、おまえは詐欺師か!)。なぜなら、「文学」という言葉が指す対象物があまりにも多様であるからだ。

ただし、フォトアートは共感を求めるものであるが、コンテンポラリーアートは共通認識を求めるものである、という定義付けをした上で、文学と呼ばれるものの中で共感を求める類の文章はフォトアートと親和性が高いが、それは一方でコンテンポラリーアートとは低い、とは結論づけられるかもしれない(特に私小説という主観性の高い文学は、写真がファインダー越しの個人的景色であることを考えれば、比較的パースペクティブがシンクロしやすいはずだ)。

写真にせよ、写真を使ったアートにせよ、アート全般にせよ、マーケットを成熟させて作家たちが飯を食わねばならぬという問題は共通課題として抱えている。そして、トークショーの中では若手写真家中心にそういった厳しい現状についても語られた。あるいは、そんな状況下で清里フォトアートミュージアムのヤング・ポートフォリオが果たしている役割も強調された(真如苑万歳?)。けれど、それらに話が及ぶと長いぞいい加減にしろと怒鳴られそうだから終わりにしておく。

オリジナルプリントの在り方についても思うところがあったけれど、それはまた別の機会にしたいと思う。

http://tokyoartvillage.blog36.fc2.com/blog-entry-276.html
Maki Abramovicさんのブログより。

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◇ 山梨の美術館・博物館/清里フォトアートミュージアム - 山梨新報社

 丘の公園入口から案内板にしたがい森の中を抜けていくとモダンな施設が現われる。入り口左手が、清里フォトアートミュージアム。館をサポートする真如苑、長坂町出身の教主・故伊藤真乗氏が写真好きであったこともあり、社会貢献のためにと設立した写真美術館。

http://www.y-shinpou.co.jp/MUSEUM/kmopa.html
真如苑という宗教団体について、とくに含みはありませんが、
清里フォトアートミュージアム(K*MoPA)の設立背景として一応。


真如苑 - Wikipedia

真如苑が母体となって設立した諸財団・諸団体

  • 教団をサポートする一如社
  • 災害時などのボランティア団体SeRV - 真如苑救援ボランティア
  • 写真美術館清里フォトアートミュージアム
  • 老人福祉を主業務とする財団法人ユニベール財団
  • 外国人留学生援助を主業務とする伊藤国際教育交流財団
  • 医療分野福祉を主業務とするIZUMI財団
  • 日産自動車村山工場跡地利用計画のプロジェクトMURAYAMA
  • 市民活動への公募助成をはじめとしたShinjoプロジェクト

http://ja.wikipedia.org/wiki/真如苑

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>>>いっそダイヤモンドの細粉を練り込んでみる(印画紙に)
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20060714#p1
銀なりプラチナなりが光って綺麗に見えるのは、
誰が考えてもあたりまえのことでしょう。


>>>エドワード・バーティンスキー(Edward Burtynsky)に対する違和感

あと、ある種のドキュメンタリー写真(サルガド?)や芸術写真を遠まわしに牽制するかのような、
サイモン・スターリング(Simon Starling)の「One Ton, II」(南アフリカのプラチナ鉱山を撮影した写真。
タイトルは、展示された5点のプラチナプリントを作るのに、1トンのプラチナがかかったという意味)と、
バーティンスキーの写真の違いについて考えてみてもいいかもしれません。
http://www.icp.org/site/c.dnJGKJNsFqG/b.2041633/k.97B6/Simon_Starling.htm

http://d.hatena.ne.jp/n-291/20080716#p5